【新春インタビュー】旅行の本格再開に向けて-JATA志村理事長、池畑事務局長

  • 2023年1月4日
-観光産業では人材不足が顕在化してきていますが、業界団体としてどのように捉えていますか。

池畑 団体として直接雇用を行うことはできませんが、会員が存続できるようにすることが重要だと考えています。JATA会員の85%は従業員30人未満の中小企業です。中小の会員には行政の経営支援策が重要になってくるので、そうした要望も続けていかなければなりません。また今年度まで緩和されている旅行業の登録更新も、継続の要望を続けてきました。

 こうした間接的な支援のほかに、従業員の雇用形態の多様化も解決の一助になると考えています。旅行業代理業の枠のなかでのホームエージェント制の普及も、プロジェクトを作って訴えています。ホームエージェント制を活用すると、育児などで一度旅行業から離れた人も、時間に縛られず、知見を活かして幅広く活躍できます。権利や権限を明確にして、法律に適合した働き方ができるようにしていきたいと考えています。

志村 業界に従事する総数を増やす考えで、インターンシップや寄附講座も行っています。新卒採用を行っている会社では、親御さんに旅行業は不安定だからと止められたという内定者がいたとも聞いているので、こうした取り組みを通して、旅行業は面白く未来がある産業だということを親御さんにも理解していただきたいと考えています。

池畑 ツーリズムEXPOでもアカデミアコーナーを設け、学問としてツーリズムに目を向けてもらえるよう、学生にも発表をしていただきました。様々な大学に参加していただき、ツーリズムの裾野を広げようと取り組んでいます。

-2023年の見通しをお聞かせください。
志村氏

志村 IATAやOAGの発表では、中国を除くアジアの航空便数は、2023年冬ダイヤからほぼ2019年並みに戻ってくるという予測となっています。便数が戻れば運賃の高止まりも緩和されるでしょう。原油価格や円安など予測できない要素もありますが、こうした予測を見る限り、需要は戻ってくるのではないかと期待しています。

 航空便に関しては、インバウンドやアジアから北米への三国需要が多く、日本人の席が取れないという問題もあります。こうした課題の解決に向けて、IATAやBOARなど業界団体への交渉を続けていきます。

 クルーズも現時点で166本復活しているということで、2019年レベルでないとしても、徐々に戻ってくるのではないでしょうか。

池畑 クルーズは地方に寄港するので、空港と併せて促進していきたいと思っています。

-観光産業に従事する読者にメッセージをお願いいたします。

志村 10月の水際対策の緩和と全国旅行支援の開始、そして国際クルーズの再開で、旅行マーケットは復活に向けてようやく一歩を踏み出すことができました。今こそ、観光業界の皆様と共に、一丸となって機運を醸成し、課題の解決に取り組んでいきたいと考えております。皆様、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

-ありがとうございました。