ドイツ、23年はコロナ前の5割回復を予想、訪日増による航空路線安定に期待も
ドイツ観光局は12月6日、都内でクリスマス懇親会を開催した。登壇した同局アジア地区統括局長兼日本支局長の西山晃氏は日本市場の今後の見通しについて、ウクライナ問題や欧州のインフレ、円安、燃油高騰、賃金停滞などの要因を踏まえたうえで「2023年は経済・地政学的な影響により変動するが、(2019年の)50%まで戻ってくれればと考えている」と語った。旅行会社との非公式な情報交換などを踏まえた予測だという。
同局によれば、22年1月から9月までの外国人宿泊数は19年比29.4%減の5062万9533泊で、コロナ前の2019年の7割程度まで回復。一方で成熟市場とみなす日本については明確な数字は出さなかったものの「9月の入国制限緩和などで一気に上がり、9月単月では19年の4割近い水準まで戻ってきた」と説明した。10月以降については数字がまだ出ていないものの「想定よりはわりといい」状況とみており、22年は19年比25%まで回復する見通しを示した。日本人旅行者の傾向としてはビジネス渡航やVFR、旅行会社を利用しないリベンジ消費のFITが多いとみており、「推測だが旅行会社のパッケージのシェアは相当低いのでは」という。
23年については富裕層をターゲットに設定。西山氏は「富裕層の人気は(欧州内では)フランスやイタリアに偏っている」と語り、ドイツへの渡航を増やすためのアプローチを強める方針を示した。同時にこれまで同様、SNSやメディアを活用したデジタルキャンペーンを実施して幅広くドイツへの興味関心を高め、将来の旅行につなげていく考え。そのために日本人の関心が高い「都市&文化」「食」「城&宮殿」「観光街道」のテーマを引き続きアピールしていく。
ドイツは毎年イヤーテーマを決めてキャンペーンをおこなっているが、23年は「世界遺産」を取り上げる予定。キャンペーン名は未定だが、世界遺産数第3位の強みをアピールしていく方針。加えて、今年と同じようにサステナブルな観光施設やサービスを紹介する「FEEL GOOD(フィールグッド)」と、自然を楽しむ「Embrace German Nature(エンブレイス・ジャーマン・ネイチャー)」を継続する。また、2024年にユーロ2024がドイツで開催されることから、サッカーが24年のテーマに内定しているという。
また、西山氏は本誌の取材に応え、ドイツからの訪日需要が好調であることから、航空会社の座席供給量の安定に期待を示した。旅行会社のツアーについては、予約が入ったとしても航空会社が需給バランスの関係などからフライトをキャンセルしたことでツアーが催行できなかったケースがあったことを説明。「訪日需要が増えれば供給量が安定し、日本発が売りやすくなる。運休中の路線の復活にもつながるのでは」と期待を話した。
このほか、懇親会では同局広報マネージャーの大畑悟氏が、ドイツ観光局が注力するSNSを活用したPRやキャンペーンについて紹介。約19万人のフォロワー数がいるTwitterの活用方法や将来の戦略などについて解説した。同氏によれば、2022年のいいね・リツイート数トップ3のツイート(キャンペーンを除く)は、1位が「不思議だらけの町・ネルトリンゲン」、2位が「悪魔の橋・ラコツ橋」、3位が「ドラクエっぽい城・エルツ城」だった。同氏はこれらの特徴として「『不思議な』『異世界』がキーワードで、ミステリアスな雰囲気を醸し出す建物や町、風景への注目が高い」点を指摘。来年は「引き続きストーリー性に満ちた発信を強化する」考えで、ドイツ観光局と協賛する航空会社や旅行会社などとのキャンペーンを実施したい旨を語った。