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【メキシコ現地レポート】マリーゴールドと蝋燭で大切な人を思う「死者の日」

  • 2022年12月5日

オアハカ市内、死者の日の風景

 「死者の日」と聞くと、かなりインパクトがある聞こえだが、日本でいうお盆。どの国でも先祖を祭る大事な日がある。メキシコは特に家族愛が強く、11月1日は子供の霊、翌日2日は大人の霊と言われ、前日の夜(10月31日)から祭壇にセンパソチル/Cenpaxochil(マリーゴールド)や蝋燭、食べ物や亡くなった方が好きだったもの、亡くなった方の写真を飾る。そして、死者の世界からこの世に唯一戻ってくる準備を家族で行う。これがメキシコの死者の日の習慣だ。家の外に祭壇を飾る家族もいるほど、町中祭壇だらけ。先祖だけではない、死んでしまった犬の写真を飾っている家族もいる。犬も家族だ。

オアハカ市内、死者の日の風景

 何故マリーゴールドをお供えするのか?匂いを嗅いだことはあるだろうか?とても良い香りがする。この香りがある方向に、死者の世界からこの記事を読んでいる皆さんの世界にたどり着けると信じられている。祭壇はオレンジ色のマリーゴールドと蝋燭の灯りでとても綺麗に、そして神秘的に見える。自分が死の世界に行っても、死者の日にこんなに綺麗に飾られて戻ってこられると思うとなんとなく死に対しての考え方が変わっていく。

オアハカ市近郊の墓地

 墓地ではメキシコの楽団「マリアッチ」を連れてくる人、メスカルやテキーラなどメキシコの地酒を持参して一緒に飲む人、写真に向かって静かに話しかける人など様々だが、どの祭壇も綺麗に装飾が施されている。墓地と聞くと寒く静かで暗くて怖いイメージだが、この時期、メキシコの墓地は全くそのような雰囲気はない。蠟燭の明かりで一面が明るく、寒さも忘れてしまうほど神秘的で、どこからか聞こえるマリアッチ演奏。ふと気が付くとあまりの美しさに周りのみんなが微笑んでいるのに気づく。そして自分も微笑んでいる。

 そんなメキシコの死者の日。

オアハカのマリアッチ

 アステカ犬という犬を聞いたことはあるだろうか?毛のない犬で正式名はショロイッツクゥイントゥレ/Xoloitzcuintleという。難しい名前だ。メキシコ人の間では、ショロでも通じるので、ショロと呼ぼう。毛が無いのは元々体温が高いからで、湯たんぽのように抱いて寝ると暖かいらしい。そのため、大事な人(王など)が亡くなった際、このショロが死者を暖め天国へ導く案内犬と伝説で言われていたという。以前、ディズニー映画でリメンバーミーというメキシコの死者の日を題材にした映画があった。その映画に登場するショロ犬ダンテがまさしく天国への案内犬だった。流石ディズニー映画と思いながら感動してみた記憶がある。

 1年に一度、亡くなっても家族が一緒になれる日、とても素晴らしい家族愛だと思う。そして、自分の時は、祭壇に何を飾っておいてもらいたいか今のうちに家族に伝えておこうかと思う。

 コロナが始まった2020年の11月、メキシコでは死者の日のパレードをやりたい人が多かった。メキシコシティのメインストリートでは、「彼らが来るのではなく、我々が行ってしまう」とパレードをさせないようにしていた人たちがいたのを覚えている。しかし、今年はパレードもたくさん行われた。コロナも落ち着いたというのもあるが、ずっと我慢をしていたせいもあってか、10月末、ほぼ毎日パレードがありレフォルマ通りは毎日昼から夜にかけて、仮装した人たちでにぎわっていた。

 死者の日として有名な場所は、オアハカ州、ミチョアカン州、そしてメキシコシティからも近いミスキック。来年は日本にはない独特の雰囲気を味わえる死者の日を組み込んだツアーはいかがだろうか。

ミチョワカン州ツィンツンツァン村の墓地

※本記事はVIAJES PASELA S.A.DE C.V.の宮良高雄氏よりご寄稿いただきました。