訪日旅行の本格再開に注力、全国旅行支援は「高い需要喚起の効果」、和田長官会見
10月11日の水際対策緩和から1ヶ月あまりが経ち、10月の観光目的での外国人入国者数は28万8900人と、9月の約15倍に増加した。これについて観光庁の和田浩一長官は11月16日の会見で「水際緩和と円安の2つの効果が相まった結果」との認識を示した。一方で、特に宿泊業での人手不足が課題であるとして「インバウンドの需要があっても受け止めきれない可能性が出てきている。官民連携で賃金水準をはじめとした待遇改善を図りながら雇用を確保していくことが重要だ」と語った。
インバウンドに関しては、10月28日に「インバウンドの本格的な回復に向けた政策パッケージ」が決定された。このなかの「観光再始動事業」は、インバウンド観光の早期回復を図るために、文化、自然、食、スポーツ等の分野で特別な体験の提供や期間限定のイベントなどを実施し、日本政府観光局(JNTO)のネットワークを活用して全世界に発信するもので、今月8日に閣議決定された令和4年度第2次補正予算案で100億円が計上された。和田氏は「本事業を通じて自治体、DMO、民間企業等の取り組みを支援し、地方を中心にインバウンド旅行者を強力に誘客する特別な体験コンテンツを全国各地で創出していきたい」と意欲を示した。
一方、円安の影響もあり、10月の出国日本人数は34万9600人と、9月の1.1倍に止まった。インバウンドの増加に対して微増の状況だが、大手旅行会社や航空会社では冬以降の予約が増加傾向にあることから、観光庁としては今後の動向を注視しながら対応を検討していく考えだ。
全国旅行支援の効果
全国旅行支援の開始からも約1ヶ月が経過した。和田氏は「当初は問い合わせや予約が殺到して混乱が見られたが、関係事業者への予算配分を随時見直すよう全都道府県に通知するなどの対応をしており、徐々に改善が見られてきている」と説明。全国旅行支援開始後の販売予約実績がコロナ禍前の同時期を超えた旅行会社があることや、大手航空・鉄道会社ではコロナ禍前の8割前後まで需要が回復していることから、「高い需要喚起の効果が現れている」との認識を示した。
先ごろ政府は、新型コロナの第8波に備え、新たな対応方針を決めた。全国旅行支援への影響が懸念されるが、和田氏は「観光庁の立場としては、全国旅行支援を継続してほしいという観光の担い手側の要望を背負っており、できる限り継続したいという思いはある」としたうえで、最終的には政府全体の方針である感染拡大の防止、社会経済のバランスのなかで判断していくことになると説明した。
旅行消費額は増加傾向
7月から9月の日本人国内旅行消費額は5兆3359億円と、前年同時期の2.3倍に増加した。コロナ禍前と比較すると20.3%減の状況だが、和田氏は需要が回復してきていると見ている。「旅行単価は今年に入ってからコロナ禍前より増えており、1回旅行に行くとなると多くの金額を使うという状況が生まれてきている。旅行マインドがコロナ禍前と同様になってくることによって消費額も増えていくだろう」(和田氏)。