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業界ニュースを振り返る ー 顧客満足度を上げる理由

  • 2022年11月11日

 今週盛り上がっているのは宿屋大学近藤氏の便乗値上げに関するコラムです。コメント欄の意見も賛否両論でなかなか盛り上がっており、業界内でも意見が割れるところなのでしょう。個人的には、卑怯なことを言えばどちらの意見もわかるといったところですが、その上でよりどちらの意見に寄せるかといえば「これを機会に値上げすればいい」です。

 まず現在、私は旅行業界においては(このコラムを書いているといえど)ただの消費者であり、消費者としての意見を言わせていただければそりゃあ安いほうがいいです。あんまり好きな言葉ではありませんが、同じサービスが受けられるのであれば安い分だけコスパがいいわけですから、私からすれば大喜びです。

 でも、宿泊業は通常営利目的の事業ですから顧客満足を上げることは手段であって目的ではありません。あくまで利益を上げ、継続することが目的なのですから、目的と手段を混同しないようにしないといけません。

 そして、宿泊業は事業の構造上「過去の在庫を販売できない」「一時的に在庫を減らすことでコストカットもできない」という特徴がありますし、売れるべきときに値上げをするべきでしょう。その上で「値上げしたら見合ったサービスではないと顧客に見限られてしまうし、値上げをしなければ事業がもう立ち行かない」のであれば、顧客体験を向上させるか、訴求するマーケットを変えるか、事業自体を止めるかといった決断を迫られることでしょう。

 そしてもう一つ、個人的に忘れられがちだなと思う観点として「そもそも、このタイミングでくるお客さんはリピーターになるのか」というところです。GoToだから、旅行支援があるから安いので来ましたというお客さんが宿泊施設のリピーターになるのかというと、私はかなり可能性として低いのではないかと思っています。

 いっちゃあなんですが、私も含めて「特別安いから行こう」ってお客さんが、割引がなくなっても元の値段で使い続けるかというと、普通難しいでしょう。可処分所得が増えるわけではありませんから。その上「安いから行こう」という客層は通常利用する客層とは違うわけですからホテルの周りの利用客もいつもと違う客層です。GoToのときに「普段と違う客層が来ていて治安が悪い」みたいなSNSでの投稿が散見されましたが、そのような状況では通常提供している価値も感じてもらえません。

 顧客満足度を上げる目的は「顧客のリピーター率向上」と「マーケティング・ブランディング」でしょうから、後者がある以上一定以上の価値を提供する必要があるとはいえ「良いホテルだったけど、もう一度は来ないかな」程度の価格に対する満足度でいいというのも経済合理性はあります。これが過激化して所得により対応を変えるとかになると当然駄目ですが。

 自分でもかなり過激に書いてみたと自覚していますが、「なぜ顧客満足度を上げるのか」「提供する価値はどのくらいあやふやなのか」は常に考えるべきテーマではないかなと思います。