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JNTO、訪日再開に向けプロモーション加速、高付加価値な旅行者の誘致へ

  • 2022年10月28日
中山氏

 日本政府観光局(JNTO)は10月26日の定例記者会見で、10月11日からの水際対策の大幅な緩和を受け、訪日旅行の再開に向けたプロモーションを本格化すると発表した。

 訪日旅行については、6月にパッケージツアーに限定して観光目的の入国が再開され、9月には訪日外客数がコロナ後初めて20万人を超えたものの、9月単月での19年比は90.9%減、1月から9月を合わせてようやく100万人を超えるに止まり、個人旅行の解禁が待たれていた。JNTO理事の中山理映子氏は「日本よりも水際対策の撤廃が早かった国々では自国へのインバウンド回復に向けた取り組みが積極的に行われている。国際競争での遅れを取り戻さなければならない」と述べ、招請事業や広告展開、イベントや商談会などを積極的に進めていく考えを示した。

 9月23日の岸田首相による水際対策緩和の表明を受け、JNTOではSNSやプレスリリースを通じて世界各国に受け入れ再開と歓迎のメッセージを発信した。各市場はこれをポジティブに受け止め、旅行会社では訪日ツアーの引き合いが急増、販売も好調との報告が寄せられているという。MICEでも動きが活発化しており、欧州から日本へのインセンティブツアーやハイブリット形式の国際会議の開催も決定した。

イメージ訴求の情報発信から誘客につなげるプロモーションへ

 訪日観光の本格再開を踏まえ、JNTOでは今後「日本への招請事業」「旅行会社・航空会社との共同広告」「リアル開催イベントや商談会の主催・参加」「訪日旅行喚起に向けた広告」の4つの軸に重点を置いてプロモーション活動を行う。

 招請事業では9月から旅行会社の招請を再開したが、23年3月にかけて、世界25市場よりメディアや旅行会社、インフルエンサーの招請を本格化させる。水際対策緩和後のリアルな日本を紹介することで、訪日ツアー造成につなげる考えだ。10月には高付加価値旅行市場に特化した「Japan Luxury Showcase」を実施。オンライン商談会には17市場48人、51団体が参加し、4日間で900件近い商談が成立した。また商談会に参加した旅行会社を招いたファムトリップは11本実施され、16市場から40名が参加した。参加者からは日本のデスティネーションとしてのすばらしさや円安のメリットを評価する声が聞かれたという。

 旅行会社・航空会社との共同広告は、23年3月にかけて24市場で実施。水際対策緩和前に行ってきたイメージ訴求の情報発信から、販売促進の広告宣伝に移行する。一例としてシンガポールでは日本航空、全日空、シンガポール航空、ジェットスターの4社と日系および現地の旅行会社、自治体などと共同で「OKAERI」キャンペーンを展開。オンラインや屋外広告を使い、日本の四季の風景とともに訪日を歓迎するメッセージを発信している。

 イベントや商談会の主催・参加については、既にオンラインでの商談会は実施していたが、今後は21市場を対象に、リアルでの旅行見本市への出展や商談会の開催を本格化する。また訪日旅行喚起に向けた広告については、欧米豪、アジアなどすべての重点・準重点市場にて、それぞれの特性に応じたキャンペーンを展開していく。

消費額5兆円へ 高付加価値旅行・AT推進

 JNTOがポストコロナのインバウンド観光の大きな柱とするのが高付加価値旅行とアドベンチャートラベル(AT)だ。JNTOでは1回の旅行で1人100万円以上の着地消費をする層を高付加価値旅行者としてターゲットに設定。消費意欲が高く知的好奇心が旺盛な高付加価値旅行者は、地域の活性化や自然・文化の維持・発展、雇用確保や所得増加、地域ファンの創出に寄与し、持続可能な観光の実現に貢献すると位置付けている。

 JNTOでは高付加価値旅行者の誘客に向け、日本の地域やサプライヤーと海外の旅行会社などのプレイヤーをつなぐハブとしての取り組みを強化している。国内ではサービス内容の蓄積や国内関係者のネットワーク化を推進し、海外ではセールスや情報発信を強化していく。また、YouTubeでは高付加価値旅行者をターゲットとした動画もテーマごとに公開している。

 ATの国際組織Adventure Travel Trade Association(ATTA)では、「アクティビティ」「自然」「文化体験」から2つ以上を組み合わせた旅行をアドベンチャートラベルと定義する。2017年の市場規模は6830億ドル(約75兆円)に上り、滞在期間が長く消費額も高いことが特徴に挙げられる。23年にはATTAが主催する世界サミット「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(ATWS)」の北海道での開催が予定されている。

 中山氏は「観光消費額5兆円は高い目標だという印象は受けているが、コロナ前から伸び悩んでいた消費額を引き上げるため、高付加価値旅行やATといった消費額が大きい方、長期滞在の方、アクティビティでお金を落としてもらえる方を重点的に呼び込んでいきたい」と語った。今後はATの最大の市場である米国で開催される商談会などの場も活用し、日本のATの情報を発信していく考えだ。