需要回復に向けた宿泊業界の現状と課題、人材不足の鍵は外国人雇用に
宿泊業界に特化した特定技能人材サービスを行うダイブと全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部はさきごろ、宿泊業界の現状と課題を提起するオンライン会見を開催した。ダイブと全旅連青年部は会見に先立ち、9月9日から27日にかけて全旅連に加盟する旅館・ホテル事業者160名を対象に人材に関するアンケート調査を実施。会見ではこの結果を元に、今後の需要回復に向けた期待と不安、人材不足を解消するための外国人雇用の必要性などが提言された。
調査では10月11日より開始される全国旅行支援や今後予定されているGo Toトラベルキャンペーンについて、76%が「期待している」、15%が「不安を感じている」と答えた。一方で「人手不足を感じているか」という質問では、88%が「感じている」と回答。ダイブでも今夏、昨年対比4倍以上の人材派遣依頼があったが、日本人の宿泊業界での就労希望者は減少傾向にあり、需給に乖離が出てきているという。
2019年から始まった在留資格「特定技制度」については、特定技能人材を「採用したい」などポジティブな意見が半数以上を占めたが、新たに人材を採用した施設でも外国人人材を採用したという施設は36%にとどまった。ダイブで外国人人材ゼネラルマネージャーを務める菅沼基氏は「特定技能は認知されているものの、詳しい運用や受け入れ体制などをご存じない施設が多いのではないか」と指摘し、特定技能人材の雇用が進まない要因として、制度の複雑さや雇用後に必要となる支援の多さ、特定技能よりも手間のかからない他の在留資格での採用が多いことを挙げた。
特定技能には12分野があるが、宿泊業はそのなかでも給与水準が低く、宿泊業での特定技能人材の雇用は22年6月末現在160人と、航空分野に次いで少ない数値となっている。菅沼氏は「宿泊業界全体として、クオリティを上げて単価を上げ、従業員に還元していくという取り組みを進めていくべき」と強調。日本国内に住む外国人も含めて人手不足の状態のため「外国人を安く使いたい」という考えでは人は定着しないといい、「しっかりと給与を払って環境も整え、色々な業界のなかから選ばれなければならない。今は日本語能力の高い方も採用できるし、さらに英語ができる方も採用できる。早く取り組んだ方がより優秀な人材を採用できるだろう」との考えを示した。