YouTubeで行き方検索、変わる「映え」、アナログ体験が人気 SNSにみるZ世代の旅行トレンド-Rakuten Optimism 2022
楽天グループが開催したオンラインイベント「Rakuten Optimism 2022」で、旅行分野2つめのセッションとして、「Z世代の旅行トレンドについて」と題するトークセッションが行われた。Z世代のトレンドに詳しいarca代表取締役&クリエイティブディレクター辻愛沙子氏とSHIBUYA109エンタテイメントSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏が、楽天グループ トラベル&モビリティ事業事業長高野芳行氏(高ははしごだか)を聞き役として、Z世代が何を求めているか、どう旅行消費につなげていけるかを話し合った。
Z世代の「映え」は世界観に溶け込むこと
高野氏によると、Z世代とは1995年から2012年生まれの世代で、日本では約15%の1900万人。世界では3分の1の人口がZ世代で、5年後10年後のビジネス上外せない層であるとした。辻氏はZ世代について、コロナ禍やSNS疲れを経て、自分の嗜好を模索する若者が増え、アナログな体験へ回帰する一方、社会課題に関心が高く、社会に意味があることを大事にすると分析した。
Z世代がどのように旅行先を決定し、どう楽しむかという高野氏の問いに、長田氏は「Z世代はデジテルネイティブであることがさまざまな価値観と結びついており、旅にはSNSが欠かせない」という。情報収集はInstagramを中心に流れてくる情報で気になったものを保存。熱海に行くと決めたら、InstagramやTiktokなどで「熱海 カフェ」など地名と興味を合わせて検索。価格の確認や予約はGoogleなどのプラットフォームを利用し、現地での効率的な周り方はYouTubeなどの動画で「熱海 旅行 行き方」と検索するという。
旅先でのSNS投稿もZ世代にとっては当たり前のことで、バズらせることよりも友人への共有が目的で、コミュニティとのコミュニケーションを活性化する手段なのだという。Z世代が服装の色などを合わせて写真を上げるのも仲良く見えるためで、「周りから見られる前提で写真を撮ってSNSに上げるのが当たり前だからこそ、コミュニケーションがSNSで広がり、映えるのを楽しんでいる」(長田氏)。そのうえで、SNSの活用で重要なのが、「その場所やその宿泊施設にいたらどういう体験ができるかビジュアルで理解ができること」と長田氏は説く。写真を撮ったときに素敵に見える、友達と楽しんでいるイメージが湧くことだという。
投稿のバズらせ方も平成後期から変化した。羽が描かれた壁の前で写真ポーズを取るのは2017年ぐらいの古い「映え1.0」で、Z世代にはすでにダサくなっているという。「今は自然に自分たちが溶け込んで『飾っていない風』の映えになっている」(長田氏)。顔を映さないのも変化点で、今は進化した「映え3.0」となり、大事なのが世界観に溶け込む自分たちを演出することで、服装もその場所に合わせて毎日違う格好をする。長田氏が世界観を完成させるZ世代のニーズをホテルの宿泊プランに落とし込んだのが、東急ホテルと実施した韓国旅行気分を味わうトカンスプランで、写真を撮りやすいように備品を用意したという。
おしゃれでなければ環境に良くてもシェアされない
辻氏はZ世代のアナログ志向に言及し、カルチャー好きな人に人気の趣味として陶芸やタフティング(ラグ作り)、クラフトビール、お花や観葉植物、レコードやコーヒーなどを挙げた。なかでも、酒蔵巡り、お茶会、タフティングなど、若い作り手が伝統文化を新たにデザインして提供している体験が人気で、長田氏も、高校生、大学生の間でもアイシャドウや香水作り、梅酒作りなど体験がこの2年で増えていると話した。
Z世代がどのようにサステナビリティを考えているかについて、辻氏は「環境配慮や人権的な動きまで幅広く意識を向けている」とし、旅行や街に関わるところで、昨年、浜松市がLGBTQや性的指向などの暴露を禁止する条例を作ったニュースが若い人たちの間で拡散されたことは、取り組みが街のポジティブなイメージを与え、いつか行ってみようという機運を作った例として挙げた。
とはいえ、Z世代にはデザイン性が重要で、環境配慮だけをアピールしても響くわけではない。京都のエースホテルはデザイン性が高く、アメニティにプラスチック製品を使用しないなどサステナブルな施設だが、Z世代に選ばれるポイントは環境配慮ではなくあくまでおしゃれだからという。辻氏は「いいことをやっていても選ばれるホテルであることが大事で、デザイン性と映えがポイント」とし、「デザイン性がSNSシェアする際のひと押しになる。環境配慮だけでは(SNSに)上げにくいこともあるが、おしゃれだとシェアする確率も上がってくる」という。
また、事業者がSNSを活用するために、長田氏は「Z世代が旅行で大事にするのは体験や映えであることを念頭に、体験を設計していくことが大事」と説く。辻氏も「コト消費とか体験はモノではないが、写真が残る時点でZ世代にとっては体験を可視化して、その写真を買いに行く感覚。何を写真として買ってもらうのか、どの瞬間を写真として持ち帰ってもらうのかを体験事業者はイメージするとわかりやすい」と語った。