ANA、2050年の脱炭素化実現に向け戦略を発表
ANAホールディングス(ANAHD)は8月1日、2050年度までのカーボンニュートラル実現に向けたトランジション戦略を発表した。中長期での環境目標達成を目指し、「運航上の改善・航空機等の技術革新」「SAF(※)の活用等(航空燃料の低炭素化)」「ネガティブエミッション技術の活用」「排出権取引制度の活用」という4つの戦略的アプローチのもと、CO2削減が困難な業種と言われる航空業界での環境対策を推進していく。
ANAHDでは、2030年までに実質CO2排出量を2019年度以下に、2050年までに実質ゼロにする目標を掲げている。これに向けて、航空管制の高度化や運航方式の改善、低燃費機材の導入を進めながら、2030年には消費燃料の10%以上をSAFに置き換え、2050年には消費燃料のほぼ全量を低炭素化していく予定だ。また、現時点では実現性が不透明なため戦略には含んでいないが、同社ではエアバス社との間で水素航空機の開発・インフラ整備に向けた共同研究プロジェクトも進めており、次世代型航空機を環境目標達成に向けた将来的な選択肢の1つと位置付けている。
一方、SAF導入によるCO2削減率は約80%であるため、削減しきれないCO2への対応策として、DAC(Direct Air Capture)等、大気中のCO2を回収するネガティブエミッション技術も活用。2050年度時点では排出権取引制度に依存しないカーボンニュートラルを目指す。
ANAHDではこれらの戦略に必要となる資金調達のため、グリーンボンド・フレームワークを策定した。グリーンボンドの発行時期や発行額等は今後決定していくという。
トランジション戦略の策定にあたり、ANAHD上席執行役員で、グループCSO(Chief Sustainability Officer)、サステナビリティ推進部長を務める宮田千夏子氏は、「2050年という長期的なタームの中では、社会も動き、水素・電気航空機など、色々な要素も変わってくる。今描いているシナリオを確実に達成していくとともに、社会の動きをキャッチアップしながら必要に応じて柔軟に見直すということも含めて取り組んでいきたい。リーダーシップを持ち、こうした取り組みを先んじて行うことで、環境対策と事業の成長を両立させることも可能だと思っている」とコメントした。
※Sustainable Aviation Fuel、再生航空燃料