業界ニュースを振り返る ー 今関西で熱い不便益の旅の話

 2週間ぶりの当コーナーです。皆様お元気でしたか? 私はついに初めての濃厚接触者となり、三連休は自宅で読書と勉強で終わる日々でした。最近はまたコロナが増え始めていますが、どうなるのでしょう。コロナが流行ってきたから旅行は止めとくか……というような人は大分減った気がしますが、ほとんどの県民割は延長せずに全国旅行支援も延期ですから、お上としては暗に自粛してねといったことなんでしょうか。

 話は変わって、触れておきたい記事は柴田氏の旅行の不便益に関するコラム。以前東京にいた頃、若手の観光産業従事者達で「不便益」こそ旅の醍醐味だという話をしたことがあります。柴田氏が例で挙げられている「本能寺の変ウォーキングコース」は京都のことぶらさんのツアーですが、他にも不便益を提供している旅行会社さんはありますし、必ずしも「旅行会社=旅行へ行くための手間を代わりにする」ではないことがわかります。

 丁度、ある意味不便益をウリにした旅行のチケットが関西で盛り上がっています。JRが実施している「サイコロきっぷ」です。別にサイコロきっぷはそんな難しいことをしていません。事前に決済してエントリーし、アプリでサイコロを振って行き先を決めるというだけです。テレビで似たような企画は散々あったでしょうし、別に目新しいものではありません。でも、旅先を自分で決めずに行くというのは現代ではすごい不便益です。今、旅行者に対してマーケティングをする際に想定するペルソナって、多分InstagramなんかのSNSを見て行きたいところ決める、っていうチャネルで流入してくるんだと思うんです。これは旅行者が事前に「何したいか」を決めてから旅を決定するわけですが、サイコロきっぷだとそれは逆になります。倉敷でフルーツたべたいなと思っていたら東舞鶴になって、そこから「東舞鶴ってなにがあるんだ?」を調べるところから始めるわけです。

 そしてこのサイコロきっぷがすごいのは、観光地にとってもメリットが大きいだろうということです。この切符を購入した人のうちほぼ1/6が旅行にくるわけですが、これまでマーケティングでリーチできていなくても半強制的に来てもらえるというあまりに強いカードです。しかもそこでファンづくりに成功すればこの企画自体がマーケティングになるわけですから。

 話が逸れましたが、不便益を旅行者に提供しつつ旅行者・観光地・JRの三方良しを実現しうるなんとも面白い企画です。ちなみに私は東舞鶴に学生時代の友達四人で行ってくることになりました。お寿司食べて海軍ゆかりの地を見て酒蔵行ってきます。