HIS、新体制で海外展開とオンライン強化-「旅行以外」も
▽ホテルなど強化し「脱旅行会社化」-M&A、若手幹部育成も
澤田氏は旅行以外の事業分野について「5年、10年後のHISの次の柱を育てようとしている」と語り、将来の収益源としてホテル、電力、ロボット、農業を強化する方針を示した。平林氏も旅行業以外の事業に注力することで「脱旅行会社化」を進める旨を説明した。
澤田氏によれば、ホテル事業では新会社として「HISホテルホールディングス」を立ち上げ、3年から5年以内に100軒を運営し、年間200億円から300億円の利益を見込むという(※関連記事)。電力事業は発電所を建設し、2年から3年以内に数十億円の利益を出す考え。
HTBのレストランやホテルなどで展開中のロボット事業については、「将来は相当大きくなり、数百、数千億円規模の事業になる可能性がある」と強調。同じくHTBで植物工場に関する研究を進める農業分野では、「世界最先端の植物工場」の建設と世界展開をめざすと述べた。HTB本体については「軌道に乗ったのでこのまま成長させていきたい」と話した。
そのほかには、経営戦略としてM&Aを積極的に実施する方針を説明。新体制ではHISの組織を人事や経理などを担当するコーポレート部門と、旅行事業部門に分割するが、このうちコーポレート部門に「M&A本部」を新設し、本部長を平林氏が担当する。今後3年間から5年間程度の期間で、M&Aに500億円を費やすという。
澤田氏は「これまではHTBなど、社外からの依頼によるM&Aが多かった」と振り返った上で、「これからは攻めのM&Aを実施する」と宣言。M&Aの対象は旅行関連の企業に加えて、電力やロボット関連など他業種も含むとした。
M&Aの方針について語った平林氏は「新興国では旅行事業で新しいオンライン系企業が次々に出てきているが、スタートアップや(起業準備中または起業したばかりの)シードにすぎないものが多い」と説明。エクスペディア・グループなどがそれらの新興企業を取り込むことで成長してきた経緯を踏まえて「我々も積極的に(M&Aの対象となる)企業を見極めたい」と意欲を示した。
澤田氏は、今後は各カンパニーが権限と責任を持つ新体制に移行することから、次世代の経営陣の育成にも注力する方針を示した。「3年から5年以内に、30代と40代にできるだけバトンタッチしたい」との考えで、15年4月に開始した「澤田経営道場」については、「いずれは彼らがHISの経営を担う時代が来る」と期待を述べた。
自らの進退については、「創業者経営者はなかなか辞めないと言われるが、気持ちとしては3年から5年(続ける見込み)。それ以上やるかどうかはわからない」とコメント。後継者については「まだ見えない」と語った。