現地レポート:ブルーマウンテンズで1泊のすすめ、商品化に高い潜在性
定番スポットの多様な魅力に焦点
宿泊施設も充実
必見ジェノラン・ケーブ、地球創世の壮大なドラマ
翌日、ブルーマウンテンズ観光の拠点となるカトゥーンバから車で1時間ほど走り、ジェノラン・ケーブに向かった。ここもブルーマウンテンズの見所のひとつ。9つの鍾乳洞が集まり、いずれも人類の歴史をはるかに超える長い年月が創りあげた神秘の世界が広がる。まず訪れたのが「ネトル・ケーブ」。ここのハイライトは、シアノバクテリアが砂や泥の表面に定着し、何層にも積み重なって形成されたストロマトライトだ。なかでも形状が美しいストロマトライトはクレイフィッシュの背中に似ていることから、「クレイバック」として親しまれている。
このストロマトライトが誕生したのは28億年前と言われ、現在も生命体として生きているというから驚きだ。光合成を行うため、洞窟に入る光に向かって年数ミリ程度の速さで成長している。現在、生きているストロマトライトが確認されているのは、世界でジェノラン・ケーブ、西オーストラリアのシャーク湾、メキシコのクアトロ・シエネガスの3ヶ所だけだという。地球創世の話にもつながるストロマトライトは教育効果も高いため、一般のツアーだけでなく、教育旅行にも最適な素材だろう。
次に訪れたのが「オリエンタル・ケーブ」。1904年に発見され、今も発見当時のままの姿を残している。自然が創りだした鍾乳石の形状はひとつとして同じものはなく、人間の創造力をはるかに超えた奇妙ながらも美しい世界が広がる。このほか、最も広い「ルーカス・ケーブ」では、自然の音響効果を生かしてチェロのコンサートが開かれるほか、ウェディング会場としても利用することが可能だ。
ネトル・ケーブはオーディオガイドを片手に個人で回ることができるが、オリエンタル・ケーブをはじめとする他の・ケーブへはツアーチケットを購入するか、現地ツアーガイドによるエスコートが必要になる。現地ランドオペレーターのIECオセアニアでは、オリエントで最大25名、ルーカスで25〜80名のツアーを催行。大規模グループであれば、グループを分けて対応しているという。
ファムツアーに参加した旅行会社担当者によると、ジェノラン・ケーブは、シドニーを朝7時に出発するオプショナルツアーに組み込まれるのが一般的。ジェノラン・ケーブにも宿泊施設が2ヶ所あるが、デイトリップが主流で、大手バッケージでは商品化されていないのが現状。「素材は素晴らしいが、1泊するとやはり値段がネックになる」と残念がる。ただ、最近ではレンタカーを借りてジェノラン・ケーブを含むブルーマウンテンズをまわるFITも増えているという。「やはり、カギは認知度をもっと高めること」とは現地ツアーガイドの声だ。
ブルーマウンテンズの価値を再確認
2012年10月にカトゥーンバにオープンしたブルーマウンテンズ・カルチャー・センター。カトゥーンバ初の本格的なアート・ギャラリーというだけでなく、常設として世界遺産ブルーマウンテンズの歴史や自然をマルチメディアで紹介している。ブルーマウンテンズに向かう前、あるいは行った後に立ち寄れば、より一層ブルーマウンテンズの価値が理解できるはずだ。
また、テラスからはカトゥーンバのキュートな町並みや遠くにジャミソンバレーを望むことができる。カフェも併設しているので、カトゥーンバ散策の途中に休憩に立ち寄ってもよさそうだ。
取材:山田友樹