「座席増」時代の旅行会社の役割、航空会社との関係-JATA経営フォーラム
座席増加の時代
航空会社とは新たな関係に
今回のパネルディスカッションで、旅行会社の大きな関心は航空会社との関係がどのようになっていくかだ。これについて、KNTの權田氏は「座席数が増えるといっても、渡航者と旅行者は違うと考えないといけない」と考え方を整理。その上で「LCCの座席数の増加が旅行会社の取扱量の増加と一致するわけではない」と指摘する。
増加座席のうち、LCCの座席数が多いと予想される中、既存の航空会社と旅行会社の関係も再び変化しそうだ。過去、数年にわたり、主要な航空会社が直販施策を進めたことから、航空会社と旅行会社の取引を含む関係に変化が生まれた。だが、これからの変化としてトップツアーの西村氏は、LCCが台頭する中、既存の航空会社は料金面以外での競争力が問われると指摘。「互いに協力できるところで路線を守り、我々の商売も繁栄させていきたい」と航空会社との共存について述べた。
例えば、レジャーでは旅行会社から航空会社にデスティネーション開発を提案する、グループ・団体では質や価値を重視するクライアントに提案をするといった、それぞれの特徴を最大限に発揮する必要がある。權田氏は、「オフラインチャーター、デスティネーション開発はGSAの倒産なども絡み、旅行会社が単体で取り組むには線香花火的な(短期間の)需要喚起、デスティネーション喚起で終わっている」といい、航空会社と旅行会社が長期的な展望にたち、地方を含めた需要喚起をする必要があると力説した。
航空会社と共存共栄し、旅行会社の価値提供へ
LCCによる座席増加と旅客増加が見込まれているが、実際に旅行会社の取扱いが伸びるかは未知数。また、LCCの参入により、消費者には魅力的な運賃が次々と登場し、移り気の多い消費者が旅行会社の顧客として定着してくれるかも分からない。
その中で旅行会社の役割は、選択が増える中で迷った人たちの判断の助けをするコンサルティング能力に価値があるといえるだろう。鹿嶋氏は、消費者からの細かな質問について「お客様の信頼にしっかりと応え、手数料はいただくがしっかりアドバイスします、といった姿勢でコンサルティングをしていくべき」と話している。
一方、航空会社も料金面以外での競争力が問われるなか、旅行会社と協力する必要がある。牛場氏は「航空会社は旅行会社とのつきあいが下手」と指摘。「極端な話」とした上で、繁忙期には旅行会社を相手にしないが、需要が少ない時期には旅行会社に頼っているとし、「振幅の局面ごとのつきあいでなく、長いスパンで関係を見るべき」と提言した。
また旅行会社側も、モデレーターを務めたエヌオーイーの橋本氏がいうように、旅行会社は航空会社と協力し、新たなビジネスモデルを創り上げていかなければならない。そのためにも橋本氏は、制度やルール変更については、旅行会社やJATAが航空会社や政府に対し、意見を上げていく必要があると指摘した。
最後に橋本氏は「アクション、一歩踏み出すのが重要」とし、「業界として、政府観光局、航空会社、政府とともに、マーケットを大きくしていくための取り組みをしていくべき」と締めくくった。