現地レポート:バルカン半島4ヶ国周遊、FIT向けにテーマのある旅を

  • 2013年4月16日

バルカン半島で複雑な歴史と世界遺産をめぐる
新デスティネーションとして高い潜在力

海辺でリゾート気分を楽しむモンテネグロ
コソボは通常観光が可能

リゾート感あふれるコトルの旧市街。日本語のツーリストマップもあった  モンテネグロでは雰囲気がガラリと変わる。景色のいい海辺の道を通ってブドヴァ、世界遺産コトルをめぐったが、どちらも海辺の古都で、リゾート感たっぷりだった。特にブドヴァは若者に人気がありナイトスポットが充実。車で10分ほどの郊外に設備の充実したリゾートもあるので、年配客はそちらに案内するほうが無難かもしれない。オフシーズンにはレストランなど営業していないところもあるが、静かでロマンチックな夜の街散策ができる。アドリア海沿岸部は晴天率も高いといい、3月の視察時もほかと比べ暖かだったのでシーズンをはずすのもよさそうだ。

コソボの首都、プリシュティナでは紛争の爪痕は見られない  そしていよいよコソボへ向かう。5年前にセルビアから独立したばかりのコソボはNATO軍による空爆を受けた印象が強く、街はまだ破壊されたままではないかと思っていたが、ほかのバルカンの国々とそう変わらなかった。地元の人の話によると、空爆された場所は限定的であり壊滅的なダメージを負ったわけではないのだそうだ。視覚的には「紛争の爪痕」を見ることはできなかった。首都のプリシュティナには紛争の終結に尽力した当時の米国大統領ビル・クリントン氏の像や独立を記念した『New Born』という文字のモニュメントなどが名所となっている。

 また、今回の視察では訪問しなかったが、プリズレン郊外には世界遺産「リェヴィシャの生神女教会」がある。セルビアが申請したセルビア正教会の遺跡であるため、コソボのセルビア人に反発する過激派による破壊行為が繰り返され、現在では国内外の兵士による警備がされているようだ。危険遺産にも指定された世界遺産だが、内部の見学も可能だという。

 ただし、コソボ紛争が後を引いているからか、コソボやアルバニアでは同遺産についてガイドも、地元の人々もよく知らなかった。そもそもコソボ紛争が勃発したのは、コソボに住むアルバニア系住民がセルビア支配から逃れ独立を望んだことにあった。コソボ国民がセルビア正教会を重要視しない傾向があるのも理解できるが、世界遺産はそれだけで旅行テーマになるほど重要な観光素材。ここまで来て見逃したという事態は避けたいところである。事前によく調べてツアーに組み込みたい。


テーマを決めた旅の設定を
丁寧なガイディングで満足度の高い旅へ

宗教遺跡が多く、かなり見応えがある。イコンやフレスコに興味のある人に。アルバニア国立オノフリ博物館にて  今回は6泊8日で4ヶ国を視察することが目的であり、かなり駆け足での訪問となった。たとえばスコピエからオフリドまで約170キロメートル、オフリドからベラットまでは約180キロメートルと距離があるが、今回は1日で2都市訪問した。しかし、道路状況や冠水や落石などで思いのほか移動に時間がかかっており、予定時刻を大幅に超えて目的地に着くこともあるため注意が必要だ。

島ひとつがリゾートという、モンテネグロのスヴェティ・ステファン  施設を見学するよりも移動時間が長いのでは、ただバルカン諸国の見どころをめぐる周遊では参加者が疲れてしまう。そこで提案したいのは、テーマの設定である。「オスマン帝国」「ビザンチン美術」「世界遺産」「アルバニア人(マザー・テレサもアルバニア人だ)」など1つのテーマで掘り下げることも可能で、むしろそのほうが印象的な旅となりそうだ。

 僻地だからこそオスマン帝国の破壊を逃れたイコンやフレスコ画などはきちんと説明を加えれば、参加者は「ここまで見に来た」という感動を覚えるだろう。景色の美しさもあり、また道中すれ違うロバで荷物を運ぶ人や町なかを駆け回る鶏など、まるでタイムスリップしたかのような素朴な光景は旅慣れた層にもおもしろいはず。じっくりと楽しむプランを提供することで満足度もぐんと上がるのではないか。旅慣れていればいるほど興味をそそる旅先だといえよう。


取材:岩佐史絵
取材協力:トルコ航空、アルバニアエクスペリエンス