トップインタビュー:エアアジアX(前)、戦略面の歩み-LCCは「ユニクロ」的

  • 2012年8月7日

マルチ・ハブ戦略でネットワーク展開
「ハイブリッド化」は否定



エアアジア(AK)グループで国際長距離路線を担い、羽田空港の再国際化に合わせて2010年12月に日本に就航したエアアジアX(D7)。2011年11月には関西国際空港への就航も果たし、約1年半の間に日本市場でD7だけでなくLCC全体の認知度を高めてきた功績は大きい。レガシーキャリアのみならずLCC間でも競争が激化していく中、どのようなビジネス戦略を描いているのか。日本市場の現状ならびに旅行会社との関係なども合わせて、D7創業からCEOを務めるアズラン・オスマン・ラニ氏に話を聞いた。


-まず、エアアジア・グループについて簡単にご紹介ください

アズラン・オスマン・ラニ氏(以下、敬称略) グループCEOであるトニー・フェルナンデスがAKのアイデアを考え出した。同時多発テロ直後で、航空業界が低迷している時期の2001年12月に立ち上げ、まずは中古機2機で国内線に参入してアジアで最初のLCCとなった。その後、SARSやインドネシアの津波などイベントリスクはあったものの、2004年から2005年にかけてはタイ・エアアジア(FD)、インドネシア・エアアジア(QZ)を立ち上げた。

 そして、2007年11月には長距離国際路線を飛ぶD7のビジネスを始めた。欧米とは異なり、アジアは広く、国際線の重要度も高いと考えたからだ。さらに、今年は5月にエアアジア・フィリピン(PQ)、8月にはエアアジア・ジャパン(JW)が次々に運航を開始するなど、順調に成長してきた。

 LCCといえば欧米のサウスウエスト航空(WN)やライアンエアー(FR)が知られるが、彼らと根本的に違う点は各地にグループ航空会社を立ち上げ、異なるマーケットや国でビジネスを展開していること、そして長距離国際線を担うD7の存在だろう。AKは欧米のLCCとは異なるユニークな歴史をたどってきたといえる。


-そもそもLCCとは何を意味するのでしょうか

オスマン・ラニ どのような産業でもプレミアムブランドを提供する企業とマスマーケットをターゲットにした企業がある。例えばシャネルとユニクロのように。同じことが航空業界にあっても不思議ではないが、航空業界は一つのビジネスモデルで進んできた。ファーストクラスの乗客とエコノミークラスの乗客が求めているものは違うにもかかわらず、同じモデルで対応してきた。

 なぜユニクロは成功しているのか。まず、値段が安く、魅力的で、大衆的なうえに質がいいからだ。LCCの最大の特徴は低運賃。D7の昨年の座席キロあたりのユニットコストは3.6米セントと世界で最も低かった。タイガーエアウェイズ(TR)で4.8から5米セント、ジェットスター航空(JQ)でも7米セント程度ではないか。どのフルサービスキャリアでも値段を下げることはできるが、コスト構造を変えない限り長続きはしない。LCC成功のカギはいうまでもなくコスト構造。まさにユニクロのビジネスだ。