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海外医療通信2022年5月号 【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2022年5月26日

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院 渡航者医療センター

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海外医療通信 2022年5月号

海外感染症流行情報 2022年5月

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況

5月も新型コロナウイルスの感染者数は世界的に減少傾向にありますが、アフリカ南部、アルゼンチン、オーストラリアなどの南半球で増加に転じています(WHO Corona virus disease 2022-5-18)。南半球はこれから冬を迎えるため、感染者数の増加が予想されます。また、オミクロン株の派生型であるBA.4やBA.5がアフリカ南部などで増加傾向にあります。BA.4、BA.5は感染力が従来のオミクロン株よりもやや強いため、今後の動向に注意が必要です。日本では大型連休後の流行再燃も僅かで、全体的に感染者数は減少しています。6月からは水際対策が大幅に緩和され、入国時の検査や入国後の健康監視が、一部の国からの入国者に限定されます。詳細は外務省の海外安全ホームページをご覧ください。海外安全ホームページ: 広域情報 (mofa.go.jp)

(2)全世界:サル痘の患者が欧米などで増加

サル痘の患者が世界的に増加しています(WHO 22-5-21)。サル痘はアフリカの赤道周辺で流行する感染症ですが、今年5月からヨーロッパ、北米、オーストラリアなどの温帯地域で130人以上の患者が確認されました。患者はアフリカの流行地域への渡航歴がなく、多くが男性間性交渉者(Men who have Sex with Men :MSM)です。 サル痘はげっ歯類の感染症でヒトの天然痘に近縁のウイルスでおこります。サルやヒトが偶発的に感染すると発熱や発疹などの症状をおこしますが、致死率は低く、ほとんどが回復します。ヒトは感染動物に接触したり、その肉を食べたりして感染するとともに、感染者の飛沫や体液などに濃厚接触して感染することもあります。今回の温帯地域での流行は、後者の感染経路によるものと考えられています。

(3)全世界:小児の急性肝炎(続報)

ヨーロッパなどで発生していた小児の原因不明の急性肝炎は、その後、世界的に拡大し、患者数は5月末までに600人以上になりました(ヨーロッパCDC 22-5-20)。このうち14人が死亡しています。患者は英国、米国、イタリア、ブラジル、スペインなどで多く、日本でも24人の疑い例が報告されました(厚生労働省22-5-20)。患者の発生は昨年10月から起きていたことが明らかになっていますが、原因は不明のままで、アデノウイルスや新型コロナウイルスの感染が考えられています。

(4)アジア:東南アジアでデング熱患者が増加

東南アジア各国でデング熱の流行が発生しています(WHO西太平洋 22-5-19)。今年はシンガポールで患者発生が多く、5月中旬までに7500人と昨年の年間患者数を越えました。マレーシアでも患者数が1万4000人になり、昨年より45%多くなっています。ベトナムは2万5000人で、ホーチミンで8000人と増えています(Outbreak news today 22-5-21)。今後、東南アジアは雨期や暑期を迎えるため、患者数がさらに増加すると予想されます。

(5)アフリカ:コンゴ民主共和国でエボラ熱の流行発生

コンゴ民主共和国の北部にある赤道州で、4月初旬にエボラ熱の流行が発生しました。5月中旬までに患者数は4人で、全員が死亡しています(WHO Africa 22-5-19)。この地域では2018年と2020年にもエボラ熱の流行が発生しています。

(6)アフリカ:モザンビークでポリオ患者発生

アフリカ南部のモザンビークで、野生型ポリオウイルス(1型)に感染した患者が1人確認されました(WHO 22-5-18)。同国で野生型ポリオウイルスの患者が発生したのは1992年以来です。患者が発生したのは北東部のマラウイ国境近くの町で、患者から検出されたウイルスは今年2月にマラウイで検出されたウイルスと同じのものでした。マラウイやモザンビークなどアフリカ南部では、野生型ポリオウイルスが再燃している可能性があり、この地域への渡航者にはポリオワクチンの接種を推奨します。

(7)北米:米国で鳥インフルH5N1型の感染者発生

4月下旬に米国のコロラド州で、鳥インフルエンザH5N1型の感染者が1人発生しました(WHO 22-5-6)。米国では初めてのH5N1型の感染例です。この感染者は家禽の流行が発生した農場で働いていており、症状は疲労感のみで回復しました。H5N1型は高病原性の鳥インフルエンザウイルスで、ヒトの感染例は2003年以来、アジアなどで800人以上が報告されています。今年、米国では多くの州で家禽の間でH5N1型の流行が発生しています。

日本国内での輸入感染症の発生状況(2022年4月11日~5月8日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査2022年 (niid.go.jp)を参考に作成しました。新型コロナウイルス感染症の輸入例については、厚労省発表の検疫実績(2022年5月23日)000941705.pdf (mhlw.go.jp)を参考にしています。
(1)経口感染症:腸チフスが3人発生し、インドネシア(2人)とインドでの感染でした。アメーバ赤痢は2人で、ミャンマーとベトナムでの感染でした。
(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱が4人発生し、ブラジル(2人)、ベトナム、シンガポールでの感染でした。マラリアは2人で、アフリカのコンゴ民主共和国とマダガスカルでの感染でした。
(3)新型コロナウイルス感染症:2022年4月10日~5月7日までに2048人が輸入例として報告されており、前月(2615人)に比べてやや減少しました。このうち外国籍は1067人(52.1%)でした。感染者の滞在国で多かったのは、ベトナム543人(外国籍514人)、米国381人(外国籍102人)、タイ139人(外国籍49人)、韓国110人(外国籍93人)、フランス94人、英国86人、オーストラリア51人、ドイツ47人、シンガポール44人、インド38人でした。

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