海外医療通信2022年4月号 【東京医科大学病院 渡航者医療センター】

  • 2022年4月27日

※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです

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東京医科大学病院 渡航者医療センター

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海外医療通信 2022年4月号

海外感染症流行情報 2022年4月

(1)全世界:新型コロナウイルスの流行状況

4月に入り新型コロナウイルスの感染者数は世界的に減少傾向にあります(WHO Corona virus disease 2022-4-21)。3月に感染者が急増していた韓国や東南アジアなどでも減少していますが、今まで感染者の少なかった中国や台湾では増加がみられています。今後、北半球は夏となるため、新しい変異株が出現しなければ、流行は暫く落ち着くものと予想されます。一方、南半球は冬の季節になるため、流行の再燃がおきる可能性があります。

日本では3月末に感染者の再増加が見られましたが、4月中旬以降は全体的に減少傾向にあります。外務省による感染症危険情報レベルも引き下げられ、4月1日に渡航禁止勧告の対象国は、それまでの150か国以上から約50か国に減りました。詳細は外務省の海外安全ホームページをご覧ください。外務省 海外安全ホームページ (mofa.go.jp)

(2)アジア:東南アジアでのデング熱流行状況

東南アジア各国でデング熱の流行が発生しています。今年に入ってからの感染者数は、フィリピンで1万2000人、マレーシアで1万人、ベトナムで1万4000人、シンガポールで4000人が報告されています(WHO西太平洋 2022-4-21)。このうちシンガポールでは感染者数が昨年の倍以上になっており、今後のさらなる増加が予想されます(Outbreak news today 2022-4-8)。同国で増加している原因としては、媒介蚊の増殖や、今まで少なかったデングウイルス3型の流行によるものと考えられています。

(3)中東:イスラエルでのポリオ流行(続報)

イスラエルのエルサレムで、同国では30年ぶりのポリオ感染者が発生したことを前号で報告しました。その後、感染者数は7人に増加しています(WHO Outbreak News 2022-4-15)。原因のウイルスはワクチン由来の3型で、1名は下肢のマヒを起こしており、それ以外は無症状です。この流行を受けて、米国CDCはイスラエルへの渡航者にポリオワクチンの追加接種を推奨しています(米国CDC Traveler’s Health 2022-4-21)。

(4)アフリカ:ケニアで黄熱の流行発生(続報)

ケニア・ナイロビの北部にあるIsiolo郡で1月から発生している黄熱の流行は、4月も続いています。4月中旬までの患者数は50人以上にのぼっており、このうち7人が死亡しました(ProMED 2022-4-10)。隣国のウガンダでも、首都カンパラ近郊のWakisoで黄熱の患者が発生している模様です(Outbreak news today 2022-3-31)。

(5)ヨーロッパ:小児の急性肝炎患者が急増

4月上旬、英国・スコットランドで小児の急性肝炎の患者が多発し、4月8日までに英国全体で70人以上の患者が確認されました(WHO Outbreak News 2022-4-15)。その後、患者は英国だけでなく、ヨーロッパ全域(スペイン、イスラエル、デンマークなど)や米国(アラバマ州)でも確認されており、4月21日までに患者数は169人にのぼっています(WHO Outbreak News 2022-4-23)。患者の年齢は生後1か月~16歳で、17人が肝移植を受け、少なくとも1人が死亡しました。患者から肝炎ウイルスは検出されていませんが、半数近くからアデノウイルス(41型)が検出されており、今回の急性肝炎の原因として疑われています。なお、患者の20人は新型コロナウイルスにも感染していました。アデノウイルスは呼吸器や消化器の症状を起こすウイルスとして知られていますが、今回のように急性肝炎を起こすことはあまり多くありません。飛沫感染や接触感染で拡大し、アルコール消毒が効かないため、水による手洗いや次亜塩素酸による器具の消毒を行います。

(6)ヨーロッパ:英国でサルモネラ食中毒の流行発生

昨年12月から、英国などでサルモネラ菌による食中毒が小児の間で増加してしており、4月中旬までにヨーロッパ全域で158人の患者が発生しました(ヨーロッパCDC 2022-4-19)。英国以外ではフランス、ベルギーなどで患者が報告されています。原因はベルギーのKinder社が製造したチョコレートで、製造過程に使用されたバターミルクが汚染されていた模様です。

(7)北米:インフルエンザ流行が遅れて発生

米国では2月中旬からインフルエンザの患者数が増加傾向にあり、4月も一定数の患者が発生しています(米国CDC flu view 2022-4-8, 22)。流行しているウイルスはA(H3N2)型で、患者は北東部や南部で多く、とくにニューメキシコ州で多く発生しています。

日本国内での輸入感染症の発生状況(2022年3月7日~4月10日)

最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査2022年 (niid.go.jp)を参考に作成しました。新型コロナウイルス感染症の輸入例については、厚労省発表の検疫実績(2022年4月15日)000932481.pdf (mhlw.go.jp)を参考にしています。
(1)経口感染症:輸入例としてはアメーバ赤痢が1人(タイでの感染)、ジアルジアが1人(インドでの感染)発生しました。
(2)昆虫が媒介する感染症:デング熱が3人発生し、いずれもインドネシアでの感染例でした。マラリアは2人で、アフリカのトーゴとガーナでの感染例でした。
(3)新型コロナウイルス感染症:2022年3月6日~4月2日までに2615人が輸入例として報告されており、前月(1525人)に比べて増加しました。このうち外国籍者は1671人(63.9%)でした。感染者の滞在国で多かったのは、ベトナム968人(外国籍903人)、韓国293人(外国籍250人)、英国132人(外国籍19人)、タイ119人(外国籍42人)、米国92人(外国籍35人)、フランス80人、スリランカ61人、ドイツ60人、シンガポール50人、カナダ48人でした。

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