フランス渡航の出国から帰国までをレポート、PCR検査は難しい?旅行会社のサポートの必要性も
2022年3月に日本政府の水際対策が緩和され、フランスへの渡航はワクチンを3回接種していれば、日本における帰国後のホテル待機が自宅待機へと変更となった。しかしコロナ禍前の旅行に比べ、出入国時に必要な書類の準備や、アプリの登録などの「手数」は増えている。加えて昨今のウクライナ危機により欧州線は路線変更を余儀なくされ、片道15~20時間を要するなど、海外旅行市場本格化への道は近づいて遠ざかる、まるで寄せては返す波の如しという印象だ。今回は3月にフランスで3年ぶりに開催されたトラベルマート「ランデヴー・アン・フランス2022」の取材で渡仏した際の、往復の状況をレポートする。
フランス入国時に必要なアプリ登録も
筆者が今回利用した航空会社は羽田発着の日本航空(JL)。フランスでは日本からの渡航については3回のワクチン接種証明か出国前のPCR検査の陰性証明書類があれば、到着時にワクチンパスポートの作成なしに入国可能という措置へと緩和されていた。このほか事前に「EU Digital Passenger Locator Form」の登録が必要で、帰国後に必要となる厚生労働省のアプリのインストールなども加えると、渡航にはスマホが必須であること、パッケージ旅行の場合はこうした機器に不得手である消費者に対しサポートが必要かと思いながら準備を進めた。
日本の自治体発行の「新型コロナウイルス感染症 予防接種証明書」(以下予防接種証明書)はコピーを取るほか、念のため画像化したものも準備。フランス入国時の宣誓書は事前に記入し準備万端と思いきや、ウクライナ危機によるロシア上空の飛行制限で、JLのパリ直行便をはじめヘルシンキ、フランクフルト便は欠航に。欧州便をロンドン経由に集約する形で、アンカレッジ上空から北極を経て、ロンドン経由による約20時間、満席でのフライトとなった。
行く先々でJLスタッフ、フランスの入国・出国はスムーズに
搭乗前のオンラインチェックインの際に、ロンドンからの経由便であるエールフランス航空(AF)から予防接種証明書の提出を求めるメールが入り、指定のリンクから書類をアップロード。出発当日はJLの専用デスクで予防接種証明書のチェックを受けた後、カウンターで荷物を預け約3年振りに出国する。
ロンドンではトランジットターミナルへ向かう途中にJLのスタッフが待機していた。帰国時のシャルル・ド・ゴール空港でも、パリからロンドンへのブリティッシュ・エアウェイズ(BA)のカウンター前でJLのスタッフが待機しており、名前と予防接種証明書、帰国時に必要なPRC検査の書類の確認と、帰国時にファストトラックを通る際に必要となるアプリの登録についてのチェックをしてくれた。後述するパリ市内でのPRC検査結果の書類に一部不備があり、その対応策のアドバイスがもらえたことも含め、これは心強いものがあった。
帰国前のPCR検査はフランス語対策が必要
このコロナ禍ならではの「手数」としてハードルの高さを感じたのが帰国便出発時刻の72時間以内のPCR検査だ。フランスの場合、指定の検査機関で検査をするのだが、これは事前に予約のうえ、指定のアプリを登録し、検査を受ける。尚、在仏日本大使館のサイト(https://www.fr.emb-japan.go.jp/itpr_ja/kensashomei.html)に、厚労省の求める検査方法と、それに合致するフランス検査機関の検索方法が記載されているので、こちらを参照することをおすすめする。今回は朝8時半に検査、同日深夜に登録したEメールに連絡があり、アプリで検査結果を確認。陰性であれば翌日薬局へ出向き、書類を作成してもらう。
現在パリでは普通に英語が通じるものの、薬局のスタッフにはフランス語しか通じない場合があり、そもそも検査結果のメールがフランス語で届くため、FITの場合はフランス語が堪能でなければ厳しいかもしれない。旅行会社はこのPCR検査が必要な限り、エア&ホテルのスケルトンパッケージにPCR検査を組み込む、PCR検査サポートのオプションを設けるなどの必要があるだろう。
日本入国は到着ロビー出るまでファストトラック利用で約1時間半
帰国の出発前に厚生労働省のアプリ「My SOS」にあらかじめ必要事項を登録し、予防接種証明書やPCR検査の陰性証明書類の画像のアップロードを行っておく。これが受理されると画面が「審査中」を示すグリーンになり、到着後に時間短縮可能なファストトラックが利用できる。念のため、ここで出てくるQRコードのスクリーンショット保存と、紙の書類はすぐ提出できるように用意しておいた方がいい。
羽田に着陸後、厚生労働省検疫所からの連絡を待ったのち飛行機を降り、あとは案内に沿って進むのみ。「ファストトラック」ルートでは、途中書類に名前やパスポート番号を書くところはあるものの、PRC検査の陰性結果を受け取り到着ロビーに出るまで約1時間半であった。
コロナ禍とウクライナ危機により、飛行機の運航状況や飛行ルート、水際対策は今後も変化が予想されるが、出発前の可能な限りの事前登録、現地でのPRC検査サポートなどの手順を講じることで、小規模ながらも市場を動かせる可能性は感じられた。
訂正箇所:第6段落第1文
誤:日本到着前72時間
↓
正:帰国便出発時刻の72時間以内
訂正箇所:第6段落第2文
誤:「フランス大使館が勧める薬局(https://www.sante.fr/cf/carte-depistage-covid.html)」は、フランス連帯・保険省が作成した情報サイトで、フランス国内における新型コロナウイルス検査が可能な機関が検索できるもので、日本の厚労省が求める検査方法に適さない機関も掲載されています。
お詫びして訂正いたします。