「観光は社会の健全性の維持に欠かせない産業」新聞広告に込めた自負-岩崎産業代表取締役社長 岩崎芳太郎氏
乗り合いバスから防災ヘリまで、鹿児島の観光と交通を支える
生産性や効率性だけでは測れない観光産業の価値を信じて
岩崎 観光は宗教的なイベント、たとえば日本ならお伊勢参りやお遍路などが起源だと思いますが、一生に一度のイベントが生活のハイライトとしてあり、それを目指して日々を生きてきた人間の歴史があります。そういった起源を持つ旅行や観光が次第に大衆化して頻度も増え、ハネムーンなど人生の節目の旅行になり、そうした観光旅行が年に1回になり2回に増えと、頻度が上がっていきました。また飲食分野でも、年に数回、家族揃って飲食店へ行ってご馳走を楽しむイベントが、次第に外食として定着し、飲み会などで日々の疲れを癒すような時代になってきました。そのイベントを楽しみに日々の仕事に励む。旅行や外食は頑張る自分へのご褒美です。人間はこうしたご褒美なしに健全に生きていけません。
ですからサプライサイドにいる観光産業の我々は、不要不急の事業に携わっているのではなく、社会に絶対的に必要な事業を生業にしているとの自覚を持つべきです。その必要性が無視されることも、この産業を生産性や効率性だけで測る発想も我慢がなりません。そのような発想だから、例えば日本が誇る和食の伝統も消えかけている。板前さんの技術の継承は、そこで働き技術を受け継ぐ人材が枯渇しているし、もう取り戻せないかもしれません。日本の名だたるホテルでさえ、自前の和食レストランを持てていないのが現実です。和食がクールジャパンだとか言っていても数年内にボロが出ます。グルメ本の星付き評価に惑わされ、実力もない料理人が称賛されるおかしなことになっています。
岩崎 自分自身も心が折れそうになることがあり偉そうなことは言えませんが、我々は世の中に絶対必要とされる産業です。他産業ももちろん必要ですが、観光は社会の健全性を維持するために欠かせない産業です。言い換えれば社会の人間的な部分を守る重要な産業なのです。金儲けしか頭にない連中の、生産性が低いといった話とは別に、自分たちを磨き自信を持って、外からの声を押し返すくらいの気概を持っていきたいと思います。
それから観光産業に対する政治家の姿勢を正してもらいたい。そのために有効なのは選挙の票です。参議院選挙に向けて、このままだったら自民党政権がなくなるぞというくらい、観光産業界は強気に物申していくべきです。それくらいしなければ変われないほど、この国の統治システムは悲しいかな劣化しているのが現実です。