1兆ドルの市場規模、オンラインツアーの今とこれから【前編】
1.74倍、これはオンラインツアーの参加経験者数の伸び率である。それも、年間の伸び率ではない、トラベルズーが行った2月と6月の調査結果の比較だ。半年にも満たない期間で大きく成長しているオンラインツアー市場だが、一部の観光産業従事者の視線は冷ややかだ。
「旅行は現地に行って空気を感じてこそ」「リアルな旅行の下位互換」「コロナ禍の間だけの一時的な商品」といった意見はネットの世界ではありふれている。一方、JNTO(日本政府観光局)が先日行った中国向けバーチャルライブツアーには延べ21万人が参加するなど、決して無視できない市場規模になってきている。
オンラインツアーとは何なのか、旅行のライバルなのか、今後どうなっていくのか。識者の見識や調査結果をもとに探っていく。
オンラインツアーマーケットの今
オンラインツアーが日本で大きく浸透したのは2020年の4月頃だ。それまでも商品は存在したが、一般的な物ではなかった。浸透した理由は言うまでもなくコロナによってだが、この一年半で市場の拡大は凄まじいものがある。
6月時点でのトラベルズーの調査では、一度でもオンラインツアーに参加したことのある人は16%、生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なう株式会社ネオマーケティングが7月に行った調査ではオンラインツアーの経験ありが全体の47.7%、経験はないが興味ありは32.3%と、すでに経験したことがある・興味がある人が80%という数値が出ている。調査媒体による偏りを加味しても、かなり高い市場参加者数だろう。
また、オンラインツアーはユーザのリピート率も高い。トラベルズーの調査ではオンラインツアーに2回以上参加したことのあるリピーターの割合は61.8%、5回以上参加した人の割合はなんと26.5%だ。オンラインツアーを取り扱うToravel At Homeでも、無料ツアー参加者のリピート率は3割、有料ツアーの場合は4割と、まだ一般に認知されてから2年も経過していないことを考えると、少なくとも現時点で市場の価値と成長可能性は高いと言えそうだ。海外でもオンラインツアーの将来性は大きいと見られており、オンラインツアーの市場規模は2022年までに1兆910億ドルになるという予測もある。
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