お客様は戻っても辞めたスタッフは戻らない-前田産業ホテルズ 統括支配人 石井昭夫氏

人材は宝、モチベーションを保ち需要回復に備える
周辺ホテルと組みエリア全体の魅力向上へ

-今年と来年についてはどこまで需要が戻ると予想しますか。

石井 需要予測は非常に難しい。強気に言えば2019年比70%、弱気に見れば45~50%となります。近隣国のワクチン接種や感染状況によりますが希望を込めて50%以上には戻ってほしいと思います。

-地域貢献やSDGsに関してどのような取り組みをしていますか。

石井 前田産業ホテルズでは『地域社会に貢献します』を経営理念に掲げ、「環境」「教育」「地域交流」の観点から、これまでCSRとしてさまざまな取り組みを行ってきました。更に持ち株会社である「ゆがふホールディングス」と共にSDGsへの取り組みをスタートしました。ホテルとしては、パイナップルの繊維から作るストローの導入も始めました。廃棄されていたパイナップル収穫後の葉の部分から繊維を取り出して土に還るストローを製造する地元企業があり、レストランで使用しています。いずれシャツが製造できればユニフォームに採用したいと考えています。

-沖縄県や日本政府には何を望みますか。

石井 観光業界は待遇面で他産業に劣ります。大学生で就活していた息子に観光業界を勧めたら「給料が報われない」と関心を示しませんでした。「安く大量に」という業界のスタイルを作ってきた自分たちが悪いのですが、人材確保のために行政にも手を貸してほしい。観光立国や観光立県を言うならば、観光産業には「おもてなし」以外にも素晴らしい側面があることを行政もアピールして欲しいし、稼げる、成長できる産業であることも広めてほしいと思います。

-最後に読者に対してメッセージをお願いいたします。

石井 観光業に携わる多くの人が、宿泊客や旅行客のために早く力を発揮したいとモチベーションを高めて観光の復活を待っているはずです。観光関連企業はこの人たちを辞めさせないでほしい。コロナが去ればお客様は戻りますが、辞めてしまったスタッフは戻りません。だから辞めさせることなく育成する。観光の場が自らを成長させ得る場だと認識してもらうことが大切。それを関係者が自覚することが重要です。最近、自戒も込めて社内で常にそう話しています。希望を持って観光業界に入ってきた人材は宝であることを再認識し、もう一度、明るい未来に皆で向かっていきましょう。

-ありがとうございました。