公認会計士が教える、恥をかかない知っておくべき会計知識 vol.4 ー ゼロベース代表 渡邊勇教氏寄稿
固定資産と減価償却 ~いつ、どんな会計処理をする? 中古資産は節税になる?~
中古資産を購入すると節税になる?
この内容、よく質問を受けます。そして個人的な見解ではありますがあまり節税が好きではありません。好きではない理由として、節税を「税金が安くなる制度」と捉えた場合、本当に種類が少ないのです。「税額控除」と呼ばれる制度が節税にはなるのですが、それ以外の内容は基本的に「課税の繰延べ」と呼ばれるものでして、今年は経費となるが、いずれそのお金が返金されたときに収益になる、というものがほとんどだからです。
すこし話が脱線しました。中古資産を購入すると節税になるのか。これも結論から言うと、節税になりません。
新品ではなく中古資産を購入すると、減価償却費を計算する前提のひとつである「耐用年数」が短く設定されます。第3回の記事でご紹介したように、耐用年数は固定資産の種類によって異なります。また、会計上と税務上で若干の考え方の違いがあるものの、多くの中小企業は、税務上の耐用年数を利用しているケースが多く見受けられます。ここで、税務上の中古資産に関する耐用年数の考え方は、以下のようになっています。
原則 | 合理的に見積もった耐用年数 |
例外 | (法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20% ※1年未満は切り捨て |
あくまでも原則的には「合理的に見積もった」となっているのですが、しばしばこれが非常に困難なケースあるため、実務的には「例外」に記載がある「(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%」を活用することが多いです。具体例で計算すると以下のようになります。
例えば、4年落ちの自動車を150万円で購入したケースを想定します。自動車の耐用年数は6年です。この場合、中古自動車の耐用年数は、以下のような計算式となり、2年が適用されます。
(6年-4年)+4年×20%=2年 |
2年で定額法で減価償却をした場合、ざっくりですが1年あたり75万円ずつ減価償却費として経費として会計処理されることになります。
長くなりましたが、ここまでがルールと計算方法の話でした。結果、節税になるのかという点でいいますと、やはりなりません。新品自動車を150万円で購入した場合、6年で減価償却費を計算することになり、4年型落ちだと2年で減価償却費を計算になる、という違いがあります。けれども、150万円の全額が(いつかの時点では)経費になる、という点においては変わりはなく、経費になる金額が異なるわけでもありません。そのため、新品自動車であっても中古自動車であっても税金が安くなる、というわけではないのです。
ビジネスにおいての支出は、あくまでも本当に必要なものなのかどうなのか、必要以上なものを購入していないのか、という観点で購入を検討することをお勧めします。
まとめ
第3回、第4回にて固定資産と減価償却を解説しました。最低限押さえておいていただきたいポイントは以下になります。
・自社で使うものを購入するときに、1年以上使う10万円以上のものは固定資産になる・固定資産となったものは、購入費用を使用可能期間にわたって分割して費用計上する、減価償却という方法で会計処理される・固定資産の計上は、所有権が移転したタイミング・減価償却費のスタートは、事業共用開始日・中古資産の購入が必ずしも節税にならない
次回は、固定資産の減損会計という論点についてお話したいと思います。
<過去の記事はこちら>
第3回 固定資産と減価償却
第2回 会計における3つの集計方法を解説
第1回 会計に出てくる資料の解説と決算書を読むポイント
公認会計士。邊勇教公認会計士・税理士事務所、ゼロベース代表
北海道帯広市出身。立命館大学卒業後、監査法人トーマツに入所。2011年に公認会計士登録。その後、渡邊勇教公認会計士・税理士事務所(かぜよみ会計事務所)設立。2018年に業務改善や財務コンサルティング、他士業との連携サービスを提供するゼロベースを設立。また、渡邊勇教公認会計士・税理士事務所の代表しても法人・個人の各種確定申告などもおこなっている。