コロナ禍でも会員増、京都の観光業を支える中小旅行会社を支援-ANTA京都府支部支部長・京都府旅行業協会会長の北澤孝之氏
長引く逆風の中真価が問われる観光産業団体。地域の中小旅行会社が多い印象の京都エリアではどのような動きが起こっているのか、全国旅行業協会(ANTA)京都府支部支部長・京都府旅行業協会会長の北澤孝之氏にその動向や打ち出した施策について話を聞いた。(聞き手:トラベルビジョン代表取締役会長 岡田直樹)
北澤孝之氏(以下敬称略) 新規入会10社、退会8社で最終的に150社の会員社数となりました。結果的に増加しており、私としても驚いたというのが正直なところです。従来であれば、旅行会社にお勤めの方が独立するというパターンが多かったが、最近は異業種からの参入が増えています。
入会される際に、直接新規会員さんとお話しさせていただく機会を設けていますが、例えばショッピングセンター内で農業体験や茶道の体験ができる商品を販売するためなど、様々な切り口で旅行業に業容拡大をしています。一方、退会社数が少ないのは、個人事業として家族営業のため継続できているところが多いのではと考えています。また、国内旅行をメインに取り扱っている会社も多いのも一因である可能性があります。
北澤 まず、会費について京都支部は金額を5000円減免にしました。当支部もANTA本部に会費を払ったりオフィス維持費等も必要なので、心ばかりではありますが近畿支部長会でも他支部の意見を参考にしながら決定しました。
大手旅行会社はGoToトラベル事務局やワクチン接種会場の運営、夜間の飲食店見回り業務等を受託しているが、中小旅行会社はなかなか大きな恩恵を受けることができていない。一方、老舗の旅館などからは、今まではOTAからの予約に比重が偏っていたものの、今後は奥が深く地元に根を張ったような中小旅行会社とタッグを組み小グループも含め様々な取り組みをしていきたいという声もいただいているので、そこで我々の強みを発揮したいとも考えています。
個人的に構想している段階なのですが、ANTA京都府支部として旅行業の資格を取得したいと考えています。会員にメリットがある企画を造成し、会員へ商品を卸し活性化に繋げるような取り組みができればと思っています。総会の承認も必要なので道のりは長いのですが、今のままでは免許の更新や保険の取り扱い、外務員証のデータ管理などしかできないので、会員へ直接的な支援ができないものかと考えています。
そのほか、京都府や議員さんに対して陳情書や要望書を送り「府内周遊旅行促進事業」を京都の旅行業者として初めて取り付けることができました。これは京都府下を周遊するバスに対しての助成金が支払われるというものです。昨年度末の2~3月の約2か月間に実行される予定でしたが、コロナ感染も再拡大してしまったため、利用は今期にずれ込んでいる状態です。現在も緊急事態宣言中なのでタイミングは慎重に見極めたいと思っています。ここぞという時に素早く始動できるように、旅行会社はいろいろ企画を考えて準備を、行政のほうは仕組みづくりをしっかり検討していこうという話をしているところで、何回も勉強会や陳情、要望など打ち合わせを重ねた甲斐がありました。
北澤 京都の旅行会社は個人事業主として一人で運営しているところが多いので、当然ながら雇用調整助成金は受給できず、金銭的な補助がない状態が1年以上続いています。事業主への給付金施策も情勢を見ながら小出しにされているのではと個人的には捉えているが、事業が継続できるよう今後も給付していただきたいし、旅行業を長い目で見てもらえれば嬉しい。また、その代わり自分たちも新たな形態を考えて動き出さなければいけないとも実感しています。
また、OTAの伸長著しいが、OTAは旅行業ではなく広告宣伝に近いと考えています。OTAと旅行業を別物として捉え、GoToトラベルキャンペーンなどに違いを多少でも反映していってくれればと考えています。大手旅行会社やOTAが造成できない、きめ細かいサービスを中小旅行会社がカバーすることにより一般的に「旅行」と呼ばれているものが維持されている面もあると思います。ANTA支部会を構成するような中小旅行会社が団体ツアーを造成することにより、お土産物店やドライブイン、観光バス、ロープウェー、遊覧船などが旅行企画に組み込まれ、助成金が循環していくことになる。裾野が広い観光産業を幅広く底支えするのは中小旅行会社が手掛ける団体ツアーではないでしょうか。
北澤 ひとりでは何もできないので、少しずつでもこうしたらよいのではないかという意見をいただきたい。何かしら次のプラスに繋がっていくのではないかと思っています。旅行業だからこそ全員がPCR検査を受けてでも研修旅行を実施し色々な意見交換をするなど何ができるか一緒に考えていければと思います。