【京都ホテルミニインタビュー】第1弾「ターゲット軸はぶらさず、STAY POSITIVE!」エースホテル京都 上席総支配人 飯田雄介氏

 京都ウィークの今週は、「ホテルミニインタビュー」と題して5日連続で京都市内のホテルへのインタビューを掲載し、GW期間中の状況や今後の戦略について紹介していく。第1弾は「ホテル総支配人リレーインタビュー」にも登場していただいたエースホテル京都 上席総支配人の飯田雄介氏。まもなく開業1年を迎える今、どのように感じているのか、思いを聞いた。(京都ウィーク総括はこちら

エースホテル京都 上席総支配人 飯田雄介氏
-2021年のGWはいかがでしたでしょうか。

飯田雄介氏(以下敬称略) 昨年末にGo To トラベルキャンペーンが中止になった時に比べると、数字の上ではそれほど大きな影響はなかったと言えます。今回の緊急事態宣言の期間は4月25日からで、24日までの予約に動きはほとんどありませんでした。とはいえ宣言の発出以前の情勢もあり、GW期間中も元々の稼働が半分くらいだったところが、さらにその半分、全体の25%くらいまで下がったというのが実情です。

 価格についてもある程度調整して販売していましたが、それでも更に安価なビジネスホテルや拠点として便利な駅近のホテルが選ばれていたような印象もあります。

-GW期間中に宿泊されたゲストをご覧になって感じられた傾向はありますでしょうか。

飯田 以前は宿泊されるゲストの約半分は東京及び関東圏、次いで大阪の方でしたが、このGWは京都の方に宿泊していただきました。傾向として当日予約も増え、地元の方が自粛はしつつも、息抜きや部屋に籠るためにご利用いただいた様子でした。元々当ホテルは部屋でもゆっくり過ごしていただけるようなコンセプトでデザインしているため、部屋での滞在時間は長い方ですが、特にこのGWはその傾向が顕著でした。また、ご家族で来館されてホテルの部屋でを楽しまれている方もいらっしゃいました。

 1階フロントにあるギフトショップでは、以前はアパレル類が売れ筋でしたが、最近はシャンプーやバスローブなど部屋で使うグッズの人気も高くなっています。

-現在の予約状況や施策についてお聞かせください。

飯田 割引キャンペーンも実施してはいるものの、値下げはあくまでブランドを考慮して決定しました。値下げ幅は他のホテルと比較分析もしています。先日トリップアドバイザーの「Hottest New Hotels For 2021」に選んでいただけたことからも、エースホテル京都に求められている価値観とあっているのではと感じています。「安いから行く」ではなくて「エースホテル京都だから行く」というお客様をしっかり掴んでいきたいと思っています。

 今京都にいらっしゃっている方は若い方が多く、ある意味当ホテルが求めている客層に近いとも言えます。「音楽」や「文化」というコンセプトを大切にしているホテルなので、それらに感度・関心が高い方というターゲット層をぶらさず、どうやって多くのお客様に知っていただきご宿泊いただけるのかのバランスが大事だと思っています。

 また、当ホテルはロイヤルティプログラムを持っていません。外資系ということもありまだ日本での知名度は高いとは言えず、OTAが動かなくなると予約率が低くなるという現状もありますので、マーケティングにも引き続き注力していこうと考えています。

-ポストコロナに向けての「攻め」の取り組みについてお聞かせください。

飯田 一番は「安心・安全とマナー」。コロナであろうがなかろうが、そこは変わりません。私たちは昨年6月のコロナ禍中に開業し、さまざまな背景をもったスタッフで始まりました。現在はお客様に「フレンドリーな接客」というところを評価していただけていますが、正直なところ、もし開業当初から2019年規模のお客様がいたらどうだったのだろうか、という疑問はあります。従業員は逆にやってみたかったとポジティブに捉えていますが私も敢えてポジティブに捉えると、コロナ禍中のスタートだったからこそ、しっかりと自分たちなりのプロシージャが確立でき、価値の基礎固めができたとも感じています。

 この情勢下、なかなかその実力を発揮しきれていませんが、エースホテル京都は本来、夜中の2時までDJがパフォーマンスして楽しめるホテルなんです。開業前には夜中の騒音チェックなどを繰り返し行い、万全を期して、地元の方々にも意見を伺いながら少しずつ受け入れていただき始めました。アクセルの踏み方が難しいものの、地元の方にも「ここにエースホテル京都があって良かった」と思ってもらえるように努力しています。最も大切なのは安心感の醸成であり、そのベースにあるのが信頼だと考えています。今後お客様が増えてもそれを実行し続けることができるかどうかが、ポストコロナにおいて最重要のポイントだと考えています。

-国や政府へ期待することなどあればお聞かせください。

飯田 現在、将来の見込みを立てるのが非常に難しい状況です。「観光需要はいつ頃戻るのか」という議論が終わることがありません。政府の施策として計画性を持ち、ワクチン接種の完遂目標などを明確に言い切っていただけると、観光産業としても我慢するところは我慢し、その上で計画を立てやすいのではないかと感じています。

-トラベルビジョンの読者である観光産業の方々へメッセージをお願いいたします。

飯田 5月半ばから、「サブウェイセラピー」という、人々が自分の今の想いをポストイットにつづり、壁に貼ってシェアすることにより不安やストレスを和らげポジティブなパワーに変えるアートプロフェクトを1階フロント脇で始めました。旅することや楽しむことへの期待や希望の声が多く見られ、とても励まされます。これは当ホテルにいらっしゃる方々の声を聴き上げるチャンスでもありますが、観光産業の皆様へのメッセージでもあると思います。STAY POSITIVE!

-ありがとうございました。