五輪や羽田枠拡大で飛躍、出国2000万人達成後は-年頭所感(2)

KNT-CTホールディングス代表取締役社長 米田昭正氏

 昨年の日本経済は緩やかな回復基調のもと、引き続き雇用や所得環境の改善が見られたが、海外経済の減速懸念もあり先行きの不透明感が増す展開となった。旅行業界においてはゴールデンウィーク期間中の旺盛な旅行需要を受け、海外旅行・国内旅行ともに好調に推移したほか、訪日旅行も韓国からの旅行者が減少したものの拡大基調を維持した。

 国内旅行については10月の台風15号・19号の影響があったものの、政府によるふっこう割導入で地域の観光が支援されることとなった。20年度の経済については、輸出や生産が緩やかながらも持ち直す一方、後半にかけては個人消費の先行きに不安が残ると予想されている。

 このような情勢のもと、当社グループは「個人旅行事業の再構築と団体旅行事業の拡大・強化」を骨子とする中期経営計画の最終年度を迎える。引き続き、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムの2つのブランド力を生かし、会員顧客のさらなる獲得、商品力の強化、ウェブ販売の拡大に注力するとともに、団体旅行の一層の強化に努める。

 今年はいよいよ東京2020オリンピック・パラリンピックが開催され、世界中の人々が東京に集まるので、日本のおもてなしを世界に発信できるよう、ホスピタリティと安全性に満ちたサービスを提供する。そしてすべてのお客様の「旅をしたい」という思いに応えるサポーターとして、誰もが旅を楽しめる社会の実現に貢献する。

日本旅行代表取締役社長 堀坂明弘氏

 創業115周年の今年はさまざまな意味でチャレンジの年と捉えている。経済のグローバル化や、マーケットにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが加速する一方で、SDGsの達成やダイバーシティ、働き方改革など、対応すべき課題は山積している。マーケットインの精神に立ち、マーケットニーズに柔軟に適応していくことでリアルエージェントとしての存在感を高めていく必要がある。

 今年は新たな中期経営計画「TRANSFORM2025」をスタートさせる。法人営業では引き続き「MICE」「インバウンド」「教育旅行」「BTM」「地方創生事業」を重点分野とし、持続的発展に向けた体制の構築などに努める。個人旅行では環境変化に対応した営業体制の再構築と最適化をはかり、ウェブとリアル店舗の連携でお客様の利便性の向上をめざす。また、旅行会社の枠に捉われず、さまざまな企業と協業し、さらなる事業領域の拡大と深化に取り組む。

 地方の活性化や新たな観光資源の開発・発信など、地域との連携も強化する。そのうちの1つがMaaSに関する取り組みで、リアルエージェントとして知見を活かし、貢献していかなければならない。そのほか今後の各地域の振興に、JR西日本グループの一員として真価を発揮していきたいと考えている。東京オリンピック・パラリンピックなど、内外で予定されている国際イベントにも積極的に関わり、成果を上げていきたい。

 取り巻く環境が著しく変化しても、私たちは「安心・安全」「お客様満足」を軸としたお客様への思いや取り組みを持ち続けている。すべての事業の根底にある「変わらないもの」を心に抱きながら、リアルエージェントの持続的な未来へ踏み出す一歩の年にしたい。

阪急交通社代表取締役社長 松田誠司氏

 昨年の旅行業界では、日韓関係の悪化や香港のデモ、消費増税などのマイナス面があったものの、最大10連休となったゴールデンウィークやラグビーワールドカップの開催、令和への改元など、日本中を希望と感動で包んだ出来事もあり、海外・国内・訪日旅行のいずれも堅調に推移した。当社グループは「お客様第一」を念頭に、継続して商品開発と品質管理に注力するとともに、強みとする添乗員付きツアーの強化、新デスティネーションの開発、航空チャーターの拡充に加えて、テレビCMによる広告展開など継続的な取り組みを踏み込んで進めた年ともなった。

 近年の消費者は世界中の商品を直接、容易に購入できるようになり、その選択の幅は広がり続けている。そのため競争の本質は、ハードからソフト、すなわち商品の中身や魅力へと移行しており、旅行業界においてもより創意工夫が求められる時代となっている。
当社はそのような環境下においても持続的に成長し続ける「骨太企業」をめざし、2017年度から3ヶ年計画でさまざまな施策に取り組んできた。

 一定の成果を上げることができたと思うが、これらを一層盤石なものとするためには、従来の旅行代理店という立ち位置から「旅行商品メーカー」「旅行アドバイザー」「旅行プロデューサー」として、より顧客に寄り添った役割を担う必要があると考える。今年もその役割を全うし、お客様の声に耳を傾け、旅行商品の深堀りと品質強化のための点検をさらに徹底することで、お客様が満足し続ける旅行サービスの提供に全力を尽くす。

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