エティハド航空、堅実経営で「世界最高」めざす、新LCC立ち上げも
エティハド航空(EY)日本支社長の稲場則夫氏がこのほど本誌取材に応じ、同社の現在地と今後の戦略などについて語った。EYはかつて前CEOのもと、積極的な大型機導入や他社への出資によるパートナーシップ強化など特徴的な取り組みを進めていたが、経営の悪化を受けて現在は経営陣も交代し2017年から5ヶ年の再建計画を進めているところ。稲場氏は現状について、「もともとの戦略は拡大路線だったが、現在はより着実なものになり、以前よりも(顧客にとって)最高、最良をめざす堅実な経営ができている」と説明。日本路線はもともと「数字としては比較的良かった」といい、今後の新機材導入と新路線就航などの機会を逃さずに捉えていく方針を示した。
投資家向けにサイト上で公開されている資料によると、EYは2015年12月末時点で121機あった航空機を今年8月現在では108機に削減。機材の種類も15種類から6種類に減らし、現在は34機のB787型機を軸に平均5.7歳の機齢を武器に路線を展開している。今後はA350型機の受納も予定しており、それによる一部機材の退役が進めば機齢はさらに若返る予定だ。
また、従業員数も、必ずしも再建の取り組みによるものとは限らないものの、同じ投資家向け資料によると15年12月末から今年8月で2万6566人が2万520人に減少。さらに、稲場氏によると提携についても出資による結びつきからコードシェアによる「スマートなパートナーシップ」に移行。ホテルチェーンなど異業種との協力関係構築も進んでいるという。航空会社との提携の見直しは、積極的に出資先のフライトを販売していた当時と比較して売上に占めるEY便のシェア向上に繋がっている。
日本路線では現在、B787-9型機で成田線を、B787-10型機で北京経由の中部線を運航。エミレーツ航空(EK)やカタール航空(QR)、ターキッシュエアラインズ(TK)、キャセイパシフィック航空(CX)、タイ国際航空(TG)などと競合しながら、業務渡航需要ではエネルギー産業系の需要が強いアブダビのほか、クウェートやバーレーン、カイロなどのガルフコーストエリア、さらに東欧などの需要を取り込んでいる。
一方、レジャー需要については、欧州の主要都市を中心に「今年はエジプトも多少出ている」ところ。目標とするのはアブダビへの需要喚起で、大使館に対して日本での観光局事務所の開設を働きかけているほか、エコノミークラスも含めてアブダビで乗り継ぐすべての旅客に対して、無料でホテル2泊分を提供する「ストップオーバーキャンペーン」を今年4月から開始。空港とホテル間の移動など課題はあるものの、来年以降も継続することで「ドバイとはまた異なる、本当のアラビアのトラディショナルな文化、豪華さを観られるものが揃ってきている」点をアピールしていく。
また、今後については、大きな路線拡充計画はないもののバクーやトリビシなどの路線について業務渡航需要を獲得していく考えで、さらに既存顧客とは異なる産業のニーズ開拓にも取り組む。また、2020年にはドバイ万博がアブダビとドバイの中間で開催されることから、企業や消費者に対して利用を呼びかけていく。
このほか、本社レベルではUAEのシャルジャをハブとするLCCのエア・アラビアと合弁で「エア・アラビア・アブダビ」を設立することも決定。詳細は未発表ながら、新LCCの立ち上げは「UAEの航空業界にとって劇的な発展であり、さらなる強みとなる」という。さらに稲場氏は、NDCについても遠くないうちに日本市場に導入される可能性を示唆した。