成田、前観光庁長官の田村氏が社長就任、羽田シフト見据え強化策

  • 2019年6月25日

(左から)前社長の夏目氏、新社長の田村氏  6月25日に成田国際空港(NAA)の代表取締役社長に就任した田村明比古氏は、同日に前代表取締役社長の夏目誠氏とともに記者会見を開催し、今後の空港運営などについて語った。来年に予定されている首都圏空港の国際線発着枠増枠に際しては、北米路線などが羽田へとシフトする見通しについて語り、「相互に補完し、競争し合う関係だが、(発着料などが)同価格であれば羽田が選ばれる状況。市場における成田の位置づけを自覚し、選ばれるために何をすべきかを考えなくては」とコメントした上で、当面はアジアのセカンダリーシティへの路線や国内線の拡充などに努め、乗継需要の取り込みにも注力する考えを示した。

 田村氏は冒頭の挨拶で、現在の成田について「首都圏の国際競争力強化や観光先進国実現のために、引き続き重要な役割を期待されている。一方で短・中・長期のさまざまな課題も山積しており、経営の観点からは厳しい環境で着実な成果が求められる」と説明。近隣国に加えて、羽田などの国内空港との路線獲得競争が激化するなかで成長をめざすには「ハード・ソフトの両面で、積極的な設備投資を含むさまざまな取り組み」が欠かせないと語った。最優先する課題については「さらなる機能強化の推進」と述べ、19年冬ダイヤから第1滑走路の夜間飛行制限が緩和されることなどをその一例として紹介した。

田村氏  そのほか空港の機能強化については、20年代の半ばを目途に供用を開始したいとする第3滑走路の建設や、第2滑走路の延伸、ターミナル施設の拡張、エンタメなどによる魅力づくり、人手不足対策のための省力化などの必要性を説明。「財布から出ていくものが大きいので経営環境は厳しいが、うまく成り立たせたい」とコメントした。そのほかLCC路線の拡充や、訪日客の増加を受けたリテール事業の強化、空港へのアクセスの改善、最新技術の導入によるスマートオペレーションなどにも意欲を示した。

 田村氏は1980年に当時の運輸省に入省後、観光部旅行振興課長などを経て2012年から航空局長、15年から昨年まで観光庁長官を務めているが、「民間からのなり手がいない」とも言われているNAAの社長に就任したことについては「(国交省での)38年間のノウハウで多少はお役に立てると思った」とコメント。また、航空局長や観光庁長官を経験した人間として「国全体に視野を広げながら、複眼的な見方ができると思う」とも語った。NAAについては「一応は株式会社だが、国が100%株主の特殊会社。民間的な経営手法を徹底させると同時に、ある程度は国策会社としての機能を果たさないといけない」と存在意義を説明した。

夏目氏  7年間にわたりNAAの代表取締役社長を務めたJR東日本出身の夏目氏は、在任期間中には空港入場時の検問廃止や、カーフューの弾力的運用を実現したことを説明。一方で、現在も新東京国際空港公団時代の体質が残ることなどについて指摘し、「風通しなどについては道半ば」と語った。田村氏については「観光や航空の経験が豊富で心強い」と述べ、今後の発展に向けたリーダーシップの発揮に期待した。