週間ランキング、1位はスカイマークのサイパン就航、TCSAの苦境も
[総評] 今週の1位は、スカイマーク(BC)が成田/サイパン間のチャーター便を就航したことをお伝えした記事でした。昨年の今ごろにデルタ航空(DL)が運休の計画を発表し、実際に昨年ゴールデンウィーク以降はオフラインとなってきたサイパンですが、BCは今年のゴールデンウィークにももう一度チャーターを実施して、早ければ夏休みにも定期便を就航する計画で、関係者の皆様にとってはようやくここまで来たと感慨を持たれているのではないかと想像します。
記事中にもある通り、実は就航に先駆けてBC代表取締役社長の市江正彦氏にお話を聞く機会をいただいており、近々掲載できる予定ですので詳細はそちらに譲りますが、市江氏は全日空(NH)と日本航空(JL)の大手2社(とNHの息のかかった他の新興航空会社)との良い意味での対決姿勢といいますか、第3極としての矜持を語っておられ、今後の国際線の本格進出にも期待がかかります。
それにしても、BCは民事再生を経て今があるわけですが、取材する側としてはその雰囲気がまるで別の会社のもののように感じられます。1996年に澤田秀雄氏によって創業された当時のことはわかりませんが、個人的には、2012年から2013年にかけて中規模旅行会社に対する支払督促を東京簡易裁判所に訴え出て、さらに債権者破産を申し立て、しかもそれをプレスリリースで公表したことが強く印象に残っています。
もちろん債権回収のための法的手段は批判されるものではありませんが、それをプレスリリースとして公表するのは他で見たことがなく、しかもそのリリースの文面には「売掛金40,060,550円(支払期限=2012年6月8日)、および売掛金24,969,632円(支払期限=同年6月2日)のいずれについても入金を確認することができませんでした」と事細かに書き記すなど、なんというかスラップ訴訟ならぬスラップ広報のようなスタイルであったわけです。
今思えば現場の広報の方々も色々と戸惑っておられたのではないかとも感じますが、いずれにしても今はトップが交代するとここまで印象も変わるのかと驚くとともに、市江氏のインタビューが終わった後は、翻って自分はチームに対して良い影響を与えられているのかと自問しています。(念のために書いておくと、私は西久保愼一前社長のような強烈な個性はまったく嫌いではなく、むしろ同じような個性を持つ方々が業界内で活躍する場面が増えてほしいと願っているほどです。)
このほか、今週印象的であったのは日本添乗サービス協会(TCSA)の通常総会後の記者会見でした。正会員は1年で1割減り、派遣添乗員も派遣会社経営者も高齢化し、若手の採用は進まず、採用支援には取り組んでいるがその効果は測定できておらず、協会としても収益減少が止められない、というような話で、そういうなかでもこうしていくんだ、これだけは達成するんだ、といった戦略も示されず、率直な感想として会見の場では「ジリ貧」「苦境」「袋小路」というような言葉ばかりが頭に浮かびました。
その後の懇親会は普段通りのよくある立食レセプションの雰囲気でしたので、たまたま会見ではそういう側面が実情より強く出てしまったのかもしれません。しかし、そうであれば広報的にはやらないほうが良かった会見ということになります。他の団体では、個々人でなく組織としての生存欲求が往々にして感じられ、逆に不都合な情報は表に出さないようにしようという方向に力が働く気がしますので、結構な衝撃を受けています。
旅行・観光産業の発展を願う立場としては、例えば学生が現役派遣添乗員の方に取材して記事を書くといった形で貢献できることがあるのではないかと思案しています。無遠慮な言葉を投げつけてしまった後でお受けいただけないかも知れませんが、ご検討いただけるようなご提案をまとめたいと思います。
なお、最後に教訓の共有まで。1位のBCの記事は本来、成田空港での記念式典を取材して書くつもりだったのですが申込用紙のFAX送信でエラーが発生していたようで叶いませんでした。東京を出発する前に気付きましたので無駄足は踏まずに済みましたが、そういうこともあり得るということで気をつけていきたいと思います。(松本)