阪急交通社、豪華バス発表-「らしさ」強調、海外展開にも意欲
阪急交通社は3月18日、豪華バス「クリスタルクルーザー菫(すみれ)」を発表した。発表会で挨拶に立った同社代表取締役社長の松田誠司氏によると、阪神航空フレンドツアーとクリスタルのブランドでビジネスクラスの利用率が8割を超え、また国内ツアーでグリーン車やグランクラスの利用が増えるなど、高級感や豪華さ、ゆとりを望む顧客が増えているといい、そうしたなかで2年前にプロジェクトを発足して準備を進めてきたという。
デザインは、「TRAIN SUITE四季島」などを手がけたKEN OKUYAMA DESIGNに依頼。「菫」の名前は、菫が阪急グループの宝塚歌劇団を象徴する花であることから華やかさや豪華さを印象付けることをめざしたほか、平安時代の和歌にも歌われるなど古くから「日本人の日常に彩りを添え」てきた菫のように旅に彩りを添えたいという思いから採用。デザイン上でも、阪急電鉄の特徴である「阪急マルーン」に近い色を使用し、ブランドの安心感や信頼感を強調した。
車両は、40人以上の定員も可能な車体に18席のみを配置してゆとりをもたせ、座席間隔は122センチメートル、座席幅は51センチメートル、リクライニング角度は最大129度とした。また座席前方にかばんなどを収納できるスペースを設けることで頭上の荷棚をなくし、これにより窓ガラスを大きくとってより良い眺望を実現。最後尾には化粧台付きのトイレを設け、快適性を向上している。バスの調達費用は通常の車両に比べて約3倍となり、数億円規模の投資となったという。
現在は2台を保有し、東日本と西日本に1台ずつを配置。目玉企画となる12日間の「日本一周の旅<東日本編>」「日本一周の旅<西日本編>」を軸として、日帰りのコースを含めて各地を巡る計画だ。旅行代金は、「日本一周の旅」の場合2名1室利用で98万円から。松田氏によると、初年度の目標は「採算ベースとしては総設定数の5割程度にいけば大成功と考えている」といい、取扱額としては10億円を掲げた。
今後の展開としては、今秋には星野リゾートの「界」に宿泊するツアーを開始。そうした取り組みに対する反響を見ながら車両の追加も検討していく。さらに、海外でも座席数を限定した高価格帯のツアーを強化していく方針で、「製造、買い取りまでいけるかは見極めが必要」であるものの、サービスの実現に向けて現地バス会社と相談しながら取り組んでいく。
なお、富裕層向け国内旅行市場では、JTB首都圏の「ROYAL ROAD PREMIUM」やクラブツーリズムの「ロイヤルクルーザー四季の華」などの車両が先行して運行されているところ。阪急交通社広報部は差別化策についての質問に対し、ツアーの魅力をアピールしたほか、車内でも芦屋の有名コーヒー店が監修したコーヒーやジュース、アルコール類を20種類用意したことも紹介した。