ソニーコーポレートサービス部長が考えるインハウスの価値と未来、BTMのあり方

「BTM(ビジネス・トラベル・マネジメント)」についてどのように定義されていますか

吉原 サプライヤー各社の皆様とWIN=WINの関係を構築し、そのうえで次の交渉に臨む、という流れをきっちりまわしていくことが基本で、それが「マネジメント」なのではないか。そして出張規定や経費規定といった会社のルールを、契約の意図と整合させ、関連部署と連携して社内を動かしていく。

 また、出張関連コストを徹底的に集約管理して、コストダウンの対象として見える化することも大切だ。

 さらに、トラベルの周辺部分にも対応して行くことが大事だろう。入国規制が厳しくなるなかで出張の円滑性を担保することもひとつだ。そうしたコンプライアンス面と運用面と、あるいは長期出張者などで問題が出てくる税務の面なども含めてうまく対応していく必要がある。

 デューティー・オブ・ケアも重要な強化分野と考えている。現在は、会社目線でも旅行会社目線でも改善の余地があり、もっと踏み込んでやっていきたい。非定常時のマネジメントこそ、これからのBTMの最重要課題と認識している。

OBT(オンライン・ブッキング・ツール)の活用状況は

吉原 2年前にConcur Travelを導入した。本社の経費精算システムの保守期限切れのため新たな経費精算システムの導入を検討することになった際に、投資効果の観点から、「Concur Travelを同時に導入することで、手配に関わるオペレーションコストや渡航費用自体の低減が期待できる」という当時のトラベルマネジメント部の意見が大きな判断材料となり、Concurの導入が決まったと聞いている。

 現在国内では、人数ベースで、グループ会社全体の6割で利用されている。出張者にとっても時代にあったインターフェイスのサービスを提供できたという意味で満足しているが、国際線の需給が逼迫し、座席が取りにくいため、コンカートラベルの機能が十分活用できないことから、コスト削減については、期待していたほどの成果が出ていない。

 一方、OBTは危険なツールという一面も持っている。予約完了で一丁上りとしてしまっては、コスト削減機会を逃してしまう。サプライヤー各社のイールドマネジメントへの対応という視点は重要だ。

今後の方針をお聞かせください

吉原 人の手による差別化は続けていくが、システムによる差別化も進めていきたい。この点、我々の最も身近にいるIT企業であるGDS各社に期待している。

 昨年11月にシンガポールのITBアジアを視察した際、多くのIT企業が旅行分野に進出していることに驚いた。こうした攻めの対応には投資が必要で、そのためには当部がプロフィットセンターとして運営していくことが求められるかもしれない。

 厳しい業界であることは承知の上で、少しずつでもソニー以外の企業との取引も行えるようになれればと考えている。外の風に吹かれることで刺激も受けられるだろう。

ありがとうございました