クレカ不正利用防止のアクルが旅行業界向け新ツール、定額制アピール
訪日市場拡大で宿泊商品のチャージバックが急増
独自の認証ツール提供で、旅行業界全体の対策強化へ
インターネットにおけるクレジットカードの不正利用が増えるなか、近年は旅行業界でも不正利用が増加傾向にある。これまでは航空券が主なターゲットだったが、最近では宿泊商品での被害が急増。国も各社にカード取引の際のセキュリティ対策を求めるなか、不正利用対策が喫緊の課題となってきた。その解決策のひとつとして、ECでカード不正利用対策ソリューションを提供するアクルは12月3日、新たに旅行業界向け認証ツール「ASUKA for Travel」の販売を開始した。その開発の背景と旅行業界に求められる対応について、同社CEOの近藤修氏とCPOの栗田和明氏に聞いた。
チャージバック被害が急増、旅行商品はトップ5入り
クレジットカードの不正利用とは、いわゆる「なりすまし」。ある人物やグループが、情報漏えいしたクレジットカード番号と有効期限を不正に取得し、他人になりすまして商品を購入する。なりすましが発覚した場合、クレジットカード会社はカード加盟店の売上を取り消す「チャージバック」を実施。チャージバックは、VISAやMasterCardなどの国際ブランドが定めた不正な取引や処理からカード会員を保護するルールで、加盟店はチャージバック分を自社で負担することになる。
日本クレジット協会によると、2017年に国内で発行したカードが国内外で不正使用された被害額は、前年比66.5%増の236億4000万円。海外の発行会社を含めると400億円から500億円にのぼると言われている。
そうした現状のなか、近藤氏は「旅行商材の被害は、高価で転売しやすいという理由で、ブランド品、家電、アパレルなどともにトップ5に入る」と旅行業界に警鐘を鳴らす。旅行業界での被害は、額だけでなく、最近では商材での広がりを見せている。以前から航空券購入時の不正利用は問題になっていたが、最近では通常の航空券に加え、株主優待券の被害が目立つようになったという。
さらに特徴的なのは、宿泊商品での不正利用が顕在化していることだ。近藤氏は「今年に入ってから急増しており、弊社への相談も急激に増えている」と明かす。その背景のひとつとして挙げられるのが、訪日外国人旅行者の増加。旅行者の分母が大きくなれば、それだけ不正利用のリスクも大きくなる。
同氏によれば、最近では海外の悪徳旅行会社による不正利用も増えている。手口は、まず悪徳旅行会社が旅行者から宿泊の申込みを受け付け、OTAなど旅行会社や宿泊施設のウェブサイト経由で宿泊を手配。その際、不正窃取したカード情報を使用して決済する。不正利用されたカードの名義人およびカード会社が情報窃取に気付かなければ、通常通り決済は完了。悪徳旅行会社は宿泊施設に予約者の情報を送信する。
旅行者は、悪徳旅行会社に宿泊費を支払い、カードの不正利用に気づかないまま通常通り宿泊する。カードの名義人が後に明細などで不正利用に気づき、代金の支払いに同意しない場合、カード会社は加盟店である旅行会社や宿泊施設にチャージバックを実施する。
栗田氏は「不正利用が一度成功すると、犯人グループは同じ宿泊施設を狙い撃ちする。お客様からは特に、直近での宿泊手配における不正対策の相談が多い」と内幕を明かす。