ユングフラウ鉄道CEO、価値と質の提供で日本市場拡大を
ユングフラウ鉄道グループCEOのウルス・ケスラー氏がこのほど来日してスイス商工会議所主催のイベントで講演し、同社の業績と新しいプロジェクトについて説明した。それによると、2017年は営業収益が前年比14.6%増の1億9377万スイスフラン(約219億円)、年間利益が同34.4%増の4160万スイスフラン(約47億円)で好調に推移。ユングフラウ鉄道全路線の利用者数は104万人となり、そのうち70%がアジアからの旅行者で、マーケットシェアでは韓国と中国が多く、次にインドと日本が続くという。
また、ケスラー氏は現在進行しているVバーン・プロジェクトについて触れ、「ユングフラウ鉄道は新たな時代に入る」と意気込みを示した。このプロジェクトは、総額4億7000万スイスフラン(約517億円)を投じて、グリンデルワトル・グルントの再開発や新型ゴンドラルートの建設などを進めるもの。インターラーケン・オストからユングフラウヨッホまでの所要時間が短縮されるなど旅行者の利便性が高まると期待されている。すべてのプロジェクトが完了するのは2020年12月の予定だ。
さらに、ケスラー氏は今後の販売方針についても言及し、「ユングフラウ鉄道をはじめスイスは、価格競争はしない。価値と質でマーケットに売り込んでいく」と説明したうえで「成功のカギはブランディング」と強調した。マーケットでは訪問者の大部分を占めるアジアを引き続き注力していく。ただ、アジアでもマーケットによって特性が違うことから、販売戦略はそれぞれの事情に合わせて展開していく。日本市場については、増加しているFITに加えて、ビジネスクラス利用で4ツ星や5ツ星ホテルに滞在する富裕層もねらっていきたい考えだ。
このほか、ケスラー氏は、毎年4月中旬から10月下旬にかけて、日本人旅行者向けにユングフラウ鉄道グループの全路線3日間乗り放題のVIPパスを提供していることを紹介し、日本市場を引き続き重視している姿勢を示した。ケスラー氏は1987年の初来日以来、たびたび日本を訪れ旅行業界との関係を築いてきた。今回の来日でも東京と大阪の主要旅行会社を訪問。「現在日本でもFIT市場が拡大しているが、旅行会社の役割は依然として大きい」とし、今後もパートナシップを強化していく考えを示した。