ネット時代の旅行業 トラベルオーダー社の手応え(1) スピード第一で信頼関係醸成
大阪市北区のトラベル・オーダー(大坪利章社長)がインターネットを活用した法人団体旅行の獲得に成果を挙げている。ネット時代のスピード感によって信頼を得て、顔が見えない相手との関係構築を図り受注につなげる。客の方が知識のある物見遊山の土俵には乗らず、「面白そうな会社」を切り口にユニークな提案を続けている。
社長の大坪さんはそれまで勤めていたホールセラー系旅行会社から1999年、大手旅行会社の有力な提携販売店だった旅行会社に就職。2001年、その会社を引き継いだ。
「直後に同時多発テロ事件が起こり、少しおさまったかなと思ったら鳥インフルエンザ、SARSと続きました。海外旅行は売れないし、法人もどうしようもない」というどん底からのスタートだった。
当時、店頭販売に力を入れていたため路面店舗を構え、営業スタッフも多く抱えていた。「家賃と人件費だけで毎月どんどんお金が出ていく。これでは会社がもたない」。大坪さんは、移転と営業形態の変更を決断する。
先代に決断を伝え、大手旅行会社との提携をやめた。店頭販売からも撤退し、会社も移転した。スタッフも独立や移籍を促した。1973年以来の社名も変えた。2005年のことだった。
大きな改革だったが、目算はあった。その前年、起業セミナーを開催している友人の言葉がヒントだった。「うちもホームページはやっていました。ツアーを紹介し、一人でもお客さんが取れないかなと思っていました。でも、彼に言わせると何のためにやっているのかわからない、と」。ツアーを陳列しているだけで、誰が見に来るのか。特色を持たせ「ここ変」と思わせないといけない。インターネットの利点は双方向にあり、旅行商品がほしい客と売りたい旅行会社がマッチングする手段だとアドバイスをもらった。
そこで、まずはやってみようと、消費者と旅行会社のマッチングサイトに登録した。すると、茨城県水戸市の携帯電話販売会社から社内旅行の見積依頼が入った。「縁もゆかりもない水戸市から突然オーダーが入ったのでびっくりしました。水戸市のことも詳しくないのですが、急ぎ石和温泉への簡単な行程表をメールで送りました」。
その社内旅行は正式に決まった。しかも儲かった。通常なら、幹事と打ち合わせをして目的の温泉地にも日参してようやく決まる旅行が、メールのやり取りだけで実現した。手数料も倍ほど違う。見たこともない人間に旅行を依頼し、ン百万円を預けるということにも驚いたが、これがネット社会というものなのかもしれない。大坪さんは「これはいけるのではないか」と手応えを感じた。
(次の記事)ネット時代の旅行業 トラベルオーダー社の手応え(2) 「面白い会社」企画力も武器に
情報提供:トラベルニュース社