KNT中計、「Webファースト」で個人旅行再構築、クラツーに期待
KNT-CTホールディングス(KNT-CT)は5月11日、2018年度からの3ヶ年の中期経営計画を発表した。昨年4月に発表した分社化などによる事業構造改革を受けたもので「売上高と利益の拡大」に向けて「Webファースト」へと転換し、ネット販売強化のための投資を強化。個人旅行事業については、4月1日に近畿日本ツーリスト個人旅行(KNT個人)を吸収合併したクラブツーリズム(クラツー)を中心に再構築し、団体旅行事業も東京五輪に向けた取り組みで拡大をはかる。20年度の売上高は17年度比12.5%増の4560億円、営業利益は73.1%増の55億円、経常利益は70.6%増の57億円、当期純利益は140.8%増の34億円をめざす。
KNT-CT代表取締役社長の丸山隆司氏(※隆は生の上に「一」)は同日に開催した記者会見で、個人旅行事業について「ウェブに対する認識が低すぎた」と振り返り、今後はネット販売を強化する姿勢を強調。パンフレット作成後にウェブサイトで販売していた商品を、ウェブサイトで先行して販売する方針を示した。17年度は個人旅行事業の取扱高の27.5%がインターネットによるものだったが、20年度には50%にまで引き上げる考え。
一方で丸山氏は、個人旅行事業が低迷する近年においても、クラツーの売上高と利益は伸長していたことを説明。「クラツーのようなテーマ性の高い商品は、OTAには真似できない」と語り、クラツーのノウハウを活かして、テーマ性の高い商品をウェブサイトでも積極的に販売する考えを語った。
今後は、クラツーとKNT個人の事業の一体化をめざし、メイトやホリデイでもテーマ性の高い商品を造成する考え。ただし、KNT-CT専務取締役の西崎一氏(※崎のつくりは立に可)によれば、航空券はクラツーの商品とメイト・ホリデイの商品では仕入れの方法や価格などが異なるためことなどから、当面はブランド別に仕入れるケースもあるという。
また、20年度を目処に両社のシステムを統合し、メイトやホリデイなどの販売サイトとクラツーの販売サイトを統合する。新たなサイトはデザインを刷新し、OTAに対抗するため旅行商品のリコメンド機能などを設ける。2社の顧客データベースも20年度を目処に集約し、マーケティングを強化。店舗で顧客の商品購入履歴などを参照しながら接客できるようにする。会員数は現在の1000万人弱から、22年度までに1230万人に増やす。
このほか、現在は3団体に分かれている契約宿泊施設や交通機関の関連団体も統合する。同社によればネット販売の強化やシステム統合などのため、3ヶ年で約94億円を投資するという。
▽「リアル店舗は維持」、店舗説明からウェブ販売の流れも
一方、リアル店舗ではメイトやホリデイに加えて、クラツーの商品販売にも注力。ウェブサイト用の旅行商品も積極的に販売する。店舗で説明を受けた商品をウェブサイトで購入する流れも作る考えで、丸山氏は「150ある店舗は減らすことはない」と明言した。
このほか、新たに設立した地域旅行会社などでは着地型旅行商品の造成に注力。商品はグループで一元管理し、宿泊施設と各地からの輸送手段を組み合わせて全国で販売するほか、修学旅行などの団体旅行や訪日旅行にも組み込み、他社との差別化をはかる。
団体旅行では、東京五輪のオフィシャルスポンサーとしての権利を最大限に活用し、大会終了後を見据えた顧客の獲得や営業強化などをはかる。また、成長領域と位置づける「訪日旅行」「地域交流」「スポーツ事業」で新規需要の創出をはかるとともに、修学旅行や海外留学、イベントなどの需要拡大、顧客データを活用したマーケティングの強化などにも取り組む。