週間ランキング、1位はJTB「第3の創業」、JAL社長交代も
[総評] 今週は、JTBグループが24日に開催した「新春講演会」で高橋広行社長(※高ははしごだか)が話された内容が1位になりました。今年がJTBにとって「第3の創業」の年になると宣言されたもので、JTBの関係者ならずとも興味を持って当然といっていいでしょう。大規模な組織改正とこのフレーズの組み合わせは、社内外への強いメッセージとなるはずです。
ただ、非常に規模の大きな話であり、今後具体的にどうなっていくのかはほとんど分かりません。むしろ、JTBともなると規模の大きさや行儀の悪いことはしにくいことなど業界最大手ならではの制約があるでしょうし、「言うは易し」であることこそ容易に予感されます。
例えば、ダイバーシティの推進も方針として掲げられていますが、先日発表された4月以降の役員人事を見ると、お名前から女性と判断できる方は発表対象となった46名のうち1名でした。政府が掲げる目標では「2020年までに課長相当職以上に占める女性の割合を少なくとも30%程度とする」こととなっており、これを当てはめればあと3年で女性役員を10人以上増やさなければならないことになります。
当然これはJTBに限らない話で、例えば外国航空会社CEOの来日レセプションなどにお邪魔すると、会場の雰囲気は真っ黒というか真っ灰色というか、年齢の高い男性ばかりが揃いも揃って同じような服装で参集されていて、トライポフォビア(※)的な絶望感を覚えることがよくあります。結局のところ私もその一員なのですが…。
※集合体恐怖症、小さな穴など同じようなものが密集している状態(蓮の実など)に恐怖を感じること |
まあ女性の登用を進めなければならないからといって能力に関係なく無理に取り立てるようなことになれば悩ましいところで、一方では是正のための痛みとも考えることもできます。このあたりはアファーマティブ・アクション的な議論になっていくので、業界で働く私たち一人ひとりが考えなければならない問題といえるでしょう。ちょうど海外の業界誌でも似たような話題が取り上げられていましたので、ご興味があれば読んでみてはいかがでしょうか(リンク)。
話がそれましたが、これ以外にも「ソリューションモデル」のビジネスや「デジタルとヒューマンタッチ」の融合、働き方改革など難しい課題が並んでおり、これをJTBという名実ともに巨大な組織で実現していくことがどれほど大変か、想像すらできません。
もちろん、そうであればこそ「創業」という言葉を採用されたわけでしょうし、それくらいしなければ生き抜くことはできないという覚悟の表れでもあるでしょう。来年の新春講演会が催されるころにどのような進展がなされているか、今からとても気になるところです。
付言すると、個人的には10年以上書き続けてきた「ジェイティービー(JTB)」の表記がもはや不要となり、また田川博己会長が折に触れて何度も口にされてきた「交流文化事業」が「交流創造事業」に取って代わられるという点は大変感慨深く、それだけで十分大きな変化なように感じています。
さて今週はこのほか、時節柄というか人事関連の記事もいくつかクランクインしています。折に触れてご説明していますが、当欄では通常、人事異動のニュースをランキングから除外するのですが、代表の交代ですとか、単なる異動対象者のリストではなく組織や戦略の変更について記事中でご紹介しているものは集計の対象としており、今週は日本航空(JL)の社長交代とHISの役員人事をランク内に残しました。
このうち2位に入ったのはJLで、日本の旅行業界への影響という意味では当然の結果でしょう。先代の大西賢会長に続いて整備ご出身ということで、パイロットご出身の植木義晴社長を含めて、運航の現場にいらっしゃった方々が続いています。
会社の中心に1人は現場経験者を、そうしなければ航空会社の真髄がわからない、という植木社長のご発言には飛行機を飛ばすという仕事に対するプライドや愛が滲んでいるように感じます。Wikipediaが正しければ、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とイベリア航空(BA)の持株会社であるインターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)のウィリー・ウォルシュCEOもパイロットご出身だそうで、「真髄」を知る強みは世界共通なのかもしれません。
ちなみに、大西会長と植木社長には実は愛煙家という共通項もあったと記憶しており、これで赤坂次期社長もそうだとなるとタバコミュニケーションという「ライン」が浮かび上がってくるかもしれない…というのはもちろん冗談です。とはいえ、私も喫煙者だったのですが、こうした喫煙所での情報収集や読者の皆様との交流がなくなってしまったのは禁煙による大きな損失となっています。(松本)
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