海外医療通信 2018年1月号【東京医科大学病院 渡航者医療センター】
※当コンテンツは、東京医科大学病院・渡航者医療センターが発行するメールマガジン「海外医療通信」を一部転載しているものです
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東京医科大学病院・渡航者医療センター
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・海外感染症流行情報 2018年1月号
(1)ブラジルのサンパウロなどで黄熱が流行
ブラジルで黄熱の患者が増加しています(WHO 2018-1-22)。2017年7月から2018年1月中旬までに35人の患者が確認され、うち20人が死亡しました。ここ数週間で患者数は3倍に増えています。患者発生はサンパウロ州(20人)、ミナス・ジェライス州(11人)、リオデジャネイロ州(3人)など南部で多くなっています。サンパウロ市近郊のMariporaではオランダ人旅行者が感染し、帰国後に発病しています。WHOはMariporaなどで市中感染が発生している可能性があるとの見解を示しています。米国CDCではサンパウロやリオデジャネイロなどの都市部でも黄熱感染のリスクがあるため、これらの地域に滞在する者にもワクチン接種を推奨しています(米国CDC 2018-1-19)。
ブラジルでは2017年初頭から南部のミナス・ジェライス州を中心に黄熱の流行が発生し、6月までに779人の患者が発生しました。この流行は7月には終息しましたが、それ以降もサンパウロ州などで動物の集団感染が報告されており、流行が持続している可能性が指摘されていました。6月までの流行は森林の中での流行でしたが、今回、サンパウロ市近郊で患者が発生したことは、都市型の黄熱流行に変化していることも考えられます。ブラジルでは2月9日からカーニバルが始まるため、日本からも数多くの旅行者が訪問しますが、同国に滞在する際には黄熱ワクチン接種を受けておくことを推奨します。
(2)アジアでのデング熱流行状況
2017年は南アジアでデング熱の患者数が増加しました(ProMED 2018-1-1)。スリランカでは年間約17万人の患者が発生し、30年ぶりの流行を記録しました。インドでは全土で15万人の患者が発生し、ニューデリーでも患者数は9000人にのぼりました。
2018年1月からは、東南アジアのマレーシアでデング熱の患者数が増え始めている模様です(WHO西太平洋 2018-1-2)。
(3)インドネシアでの麻疹流行
米国CDCはインドネシアへの旅行者に麻疹ワクチンの接種を推奨しています(米国CDC 2018-1-12)。これは、最近になり、オーストラリア、カナダ、台湾などで、インドネシアで感染した麻疹患者が確認されたためです。日本では20歳代後半~30歳代の世代で麻疹の免疫力が低く、この世代の人が麻疹の流行国に滞在する際には、事前にワクチン接種を受けておくことを推奨します。
(4)ニュージーランドでの流行性耳下腺炎流行
ニュージーランドのオークランドで、2017年12月までに流行性耳下腺炎(ムンプス)の患者が1000人以上発生しました(英国FitForTravel 2017-12-27)。日本では流行性耳下腺炎が定期接種に入っていないため、免疫のない人が多くみられます。流行国に滞在する場合は、抗体測定で免疫を確認するか、ワクチン接種を受けることをお勧めします。
(5)北半球での季節性インフルエンザの流行状況
北半球では1月になり各地で季節性インフルエンザの流行がおきています(WHO 2018-1-22)。カナダでは例年を越える患者数になっており、ウイルスの種類としてはB型が多くみられます。米国でも流行がピークに近くなっており、A(H3N2)型が多い状況です。ヨーロッパではB型を中心とした流行がみられています。中国では過去3シーズンに比べて、最も多い患者数となっており、ウイルスの種類はB型とともにA(H3N2)型が検出されています。
・日本国内での輸入感染症の発生状況(2017年12月11日~2018年1月7日)
最近1ヶ月間の輸入感染症の発生状況について、国立感染症研究所の感染症発生動向調査を参考に作成しました。出典:https://www.niid.go.jp/niid/ja/idwr-dl/2017.html
(1)経口感染症:輸入例としては細菌性赤痢3例、腸管出血性大腸菌感染症1例、アメーバ赤痢6例、A型肝炎2例、ジアルジア症1例が報告されています。今回は腸チフス・パラチフスの事例は報告されませんでした。
(2)蚊が媒介する感染症:デング熱は6例で、前月(14例)からやや減少しました。感染国はフィリピンが2例で最多でした。デング熱の2017年の最終症例数は245例で、2016年の338例に比べて減少しました。マラリアは2例で、アフリカ(カメルーン)での感染が1例、ソロモン諸島での感染が1例でした。チクングニア熱は1例でインドでの感染でした。
(3)その他:今回は麻疹、風疹の輸入例は報告されませんでした。コクシジオイデス症が1例報告されており、米国での感染でした。この病気は土壌中の真菌が原因となり、肺炎などをおこします。米国のカリフォルニア州やアリゾナ州で感染するケースが多くみられます。
・今月の海外医療トピックス
食物アレルギーのある旅行者への情報提供
トラベルクリニックでは、海外渡航や留学に際し、様々なアレルギーを持つ方々から質問を受けることがあります。その多くは、持参薬とその英文証明書、現地での対応などですが、米国のFood Allergy Research & Educationのサイトでは、日本を含む11ヵ国での救急車の呼び方、薬剤入手の有無、現地の食べ物の英語表記などについての情報をPDFファイルでダウンロードすることが可能です。また食物アレルギーを持つ方が海外旅行する際、病状やアレルゲンなどを英文にして持参する書類の雛型もあり、大変有用な情報があります。是非参考にされて下さい。(兼任講師 古賀才博)
https://www.foodallergy.org/life-with-food-allergies/managing-lifes-milestones/traveling/travel-tips-for-the-us-and-other
・渡航者医療センターからのお知らせ
(1)第19回渡航医学実用セミナー(当センター主催)
当センターでは、渡航医学に関連するテーマのセミナーを定期的に開催しています。
次回は「緊急医療搬送のABC」をテーマに、下記の日程で三菱重工業の宮城啓先生、インターナショナルSOSの葵佳宏先生にご講演をお願いしています。
・日時:2018年2月22日(木)午後2時~午後4時半 ・場所:東京医科大学病院6階 臨床講堂
・プログラムや申込み方法は当センターのホームページをご参照ください。
http://hospinfo.tokyo-med.ac.jp/shinryo/tokou/seminar.html
(2)第33回トラベラーズワクチンフォーラム研修会(バイオメデイカルサイエンス研究会主催)
今回は「マダニに媒介される感染症とその予防」などをテーマに、下記の日程で開催します。
・日時:2018年3月10日(土)午後1時半~午後5時半 ・場所:国立国際医療研究センター研究所
・プログラムや申込み方法は下記のホームページをご参照ください