ANAHD、20年度までのローリングプラン発表、LCCなど強化
ANAHDは4月28日、昨年1月に発表した「2016~2020年度ANAグループ中期経営戦略」を修正した「ローリング版2017」を発表した。発表後の環境変化などを踏まえたもので、「エアライン事業領域の拡大」と航空事業以外の「新規事業の創造と既存事業の成長加速」を柱に、東京五輪や首都圏空港の発着枠拡大などが予定される20年に備えるとともに、その後の持続的成長につなげる。20年度の目標として掲げていた売上高2兆1600億円、営業利益2000億円、営業利益率9.3%については変更しなかった。
主力の航空事業については全日空(NH)によるFSC事業と、バニラエア(JW)やこのほど連結化したピーチ・アビエーション(MM)などのLCC事業とによる「マルチブランド戦略」を推進。国内外を問わずあらゆる利用者層に、各ブランドをアピールする。28日の発表記者会見で、同社上席執行役員グループ経営戦略室長の芝田浩二氏は「貪欲にすべての需要を取り込みたい」と語った。
FSC事業では「成長のドライバー」と考える国際線についてはこれまでの「首都圏デュアルハブ戦略」を継続し、20年に向けてエアバスA320neo型機、ボーイングB777-9X型機、B787-10型機などの最新機材を順次導入。首都圏/ホノルル間では20年にA380型機を導入する前に、19年にフルフラットシートのビジネスクラスを搭載したB787-9型機の使用を開始するとした。20年度の売上高の目標は15年度比40%増(約7218億円)で、15年度の6856億円程度を維持する予定の国内線を上回る見込みだ。
国内線については、売上規模こそ増加しないが、さらなる効率化と新たな利用者層の開拓に努める考え。17年度にはA321neo型機を4機導入する予定で、需要適応策の「ピタッとフリート」でさらなる収益性向上をはかるとともに、若年層や訪日旅行者の取り込みを強化する。
LCC事業についてはJWとMMの独自性を維持した上で、グループの中核事業の1つへと育てる。20年度の売上高の目標は15年度比860%増(約2093億円)で、「ANAグループで国内LCCのトップシェアを獲得」する考え。JWについては中距離路線への進出を検討し、芝田氏によれば想定する目的地としては「7000キロメートルから8000キロメートル前後で、(米国)西海岸を含む」という。MMについては、仙台や新千歳などの拠点化に加えて非航空系事業にも注力。2社は整備やオペレーションなどで連携を進めることで、効率化やコスト削減にも努める。
なお、LCC事業を含むANAグループの総機材数は、20年度には335機程度に増加する予定。16年度末の268機との比較では51.2%増となる。
商社事業など航空以外の事業については、20年度の売上高の目標として15年度比20%増(約4598億円)をめざす。拡大する訪日外国人旅行者を取り込むビジネスを模索するほか、16年度に設立した新会社のANA Xを中心に、グループの顧客の日常的な消費行動にフォーカスした新たな事業を展開する考え。一方で既存事業における選択と集中、外注化も進めるという。
なお、20年度の数値目標については修正しなかったものの、17年度については当初の1兆9300億円を1兆9100億円に、営業利益は1700億円を1500億円に、営業利益率は8.8%を7.9%にそれぞれ下方修正した。国際線を中心に路線を拡大してきたここ数年間を振り返り、機材の整備や人材などに投資する「総点検の年」とする考えだが、営業利益については3年連続の記録更新をめざす。