JTB、訪日向けに「乗合型」バスツアー、欧のグループ会社と協働
JTBグループ企業でマドリードに本社を置くEuropa Mundo Vacaciones(EMV)は4月から、JTBグローバルマーケティング&トラベル(JTBGMT)と協力し、訪日外国人旅行者向けの「乗合型」観光バスツアーの提供を本格的に開始する。すでにヨーロッパなどの45ヶ国で展開しているもので、アジアでの提供はこれが初めて。まずは欧米豪などの約20ヶ国で販売し、EMVの利用者の多くを占めるスペイン人や中南米人などから取り込みを開始する。JTBGMTはランドオペレーターとしてガイドやバスの手配などを務める。
今回提供する乗合型のバスツアーは、欧米などでは「シート・イン・コーチ(SIC)」と呼ばれている旅行形態で、EMVは1997年から欧州で事業を展開。現在は52の基本コースを設定し、その上で複数のコースの組み合わせや一部区間のみの乗車なども可能にして、800近いツアー商品を提供している。16年の利用者は約12万7000人に上る。
3月2日に都内で開催した発表会見で、EMV代表取締役社長のルイス・ガルシア氏は、最少催行人数が1名であることや、途中下車も可能で次のバスが来るまでは自由に滞在を楽しめることなどを強調。従来の日程やコースの変更などができない観光バスツアーに比べて、格段に柔軟性が高いことをアピールした。JTBGMT代表取締役社長の座間久徳氏は「訪日外国人旅行者の地域分散にも非常に良いプロジェクト」と胸を張った。
17年の取扱人員数の目標は5000人。ジェイティービー(JTB)取締役訪日インバウンドビジネス推進部長の坪井泰博氏は「JTBグループが16年に取り扱った訪日外国人旅行者の数は約316万人。現時点ではインパクトは非常に少ないが、倍々ゲームで伸ばしたい」と述べ、利益率の高さに期待した。20年には「数万人規模」に伸ばしたいという。
日本では22都道府県に及ぶ5つの基本コースを設定し、48の商品を提供。基本の5コースは、札幌から東京までの10日間の「North Japan」、東京から京都までの8日間の「Central Japan」、大阪・京都・高野山を訪れる5日間の「Osaka and Kyoto」、瀬戸内海周辺をめぐる6日間の「South Japan Express」、九州などと韓国をあわせた9日間の「Korea and Japan」で、一部のルートではフェリーも使う。バスは45席の一般的な観光バス車両を使用。坪井氏は「1台あたり20名ぐらいが損益分岐点」との見方を示した。
48商品の行程は平均12日、最大22日と長いのが特徴。例えば「Korea and Japan」以外の4コースを乗り継いで札幌から広島までを訪れる「Japan In Depth end Hiroshima」は12泊13日で、旅行代金は2名1室利用の場合1名3920ユーロとなる。バスにはスペイン語話者または英語話者のガイドが乗車する予定で、事業がうまくいけば、将来的には中国語圏の旅行者の取り込みも視野に入れるという。
なお、この日の会見でEMVは、18年には事業範囲を中国にまで拡大したい考えを説明。さらに22年には東南アジアにまで進出し、北海道からシンガポールまでの旅行をバスとフェリーだけで提供する構想も示した。