パスポートに値下げ要望-行政レビュー、澤田社長も出席
国による各種事業についてPDCAサイクルを機能させるために実施される「行政事業レビュー」が11月10日から開催され、12日にはパスポート発給に関わる業務のレビューがおこなわれた。
参考人として出席したエイチ・アイ・エス(HIS)代表取締役会長兼社長(CEO)の澤田秀雄氏は、手数料を値下げし手続きの煩雑さを解消すれば、取得率が高まって結果的に1冊あたりのコストが下がるとの考えを示して取り組みを要望。また、同じく参考人を務めた日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会代表理事の前田陽二氏も、電子政府化が進んでいるエストニアを例として、マイナンバーカードと戸籍情報を連携し活用することでコストや手間を削減できると提案した。
レビューでは、まず外務省旅券課が前回レビューからのコスト削減の取り組みを紹介。その上で、冊子の費用や機器の開発、リースなど旅券の作成そのものにかかる費用に人件費やシステム開発費などを加えた「直接行政経費」が1冊あたり約4000円、都道府県側の経費が約2000円、そして海外での邦人援護などに必要な人件費や通信費など「間接行政経費」が約1万円かかっていると説明した。
これに対して公認会計士や大学教員を中心とした参加者からは、邦人援護費用をパスポート取得者のみに支払わせる受益者負担の妥当性や1万円の妥当性、海外滞在日数の差による「受益」の平等性などに疑問が呈されたほか、コスト削減の取り組みが遅いなどの厳しい意見が出された。手数料については、文教大学経営学部准教授で公認会計士の石田晴美氏が、学生の実際の声としてLCCでの韓国旅行を検討したものの、航空券よりも高い手数料を前に断念したとのエピソードも紹介した。
今回のレビューで大きな変化が決定するものではないが、終了前のまとめでは、予算と実際にかかったコストを明確化するとともに、その内訳を分かりやすく開示する必要があると指摘され、またマイナンバーとの連携などによるコスト削減に積極的かつスピード感を持って取り組むことが求められた。