DMOはまだか(2) 「稼ぐ観光」へ環境と組織を創造

 DMOのあり方について、トラベルニュースat本紙25日号の「NATO廃絶」で山田桂一郎さんが連載、詳述している。その中で強調しているのは、DMO先進地の欧米での役割や機能と、日本版DMOとの違いだ。

真の地域活性化のエンジンに

 もともとのDMOは地域内の消費額と経済効果を高めることで、地域全体の利潤を追求することを目的としている。これに対して、日本版DMOは地域への集客や誘客が主になっており、地域の経営組織としてうまく機能するのかと、山田さんは警鐘を鳴らす。そのための方策は今後の連載で明らかにしていくとしており、9月25日号以降の「NATO廃絶」を引き続きお読みいただきたい。

 じゃらんリサーチセンターは8月末に大阪市内で開いたセミナーでDMOに関する研究発表を行った。発表した同センター研究員の北嶋織里恵さんが強調したのは、地域内のキーパーソンが「地域のあるべき姿(ビジョン・コンセプト)」を共有すること。同センターで設立に関わった宮城県気仙沼DMOでは、水産業と観光業を融合した「仕事とくらしのテーマパーク」をまちの未来像とし、その実現のため担当組織を明確にした。

 北嶋さんは、DMOによって「稼ぐ観光」による地域の課題解決が求められるとし、地域の「価値創造」「需要創造」「消費創造」するための環境と組織を創造することがDMOだとした。「地域産業間ができていないままだと地域経済が衰退の危機になります。DMOは地域のビジネスをサポートできる組織でもあるのです」。

 「何をしていいのかわからない」「観光協会とどう違うのか」など、DMOに対して困惑する話を聞くことは少なくない。じゃらんのセミナーで「国の助成目的で、にわか仕立てのDMOはやめよう」という声を聞いたが、真の地域活性化のエンジンとして当事者の矜持が求められるのがDMOだともいえるのかもしれない。

 (トラベルニュースat 16年9月10日号)

(16/09/16)


情報提供:トラベルニュース社