現地レポート:パプアニューギニア、海と山と伝統文化の魅力
ニューギニア航空増便でツアーに幅
レジャー需要掘り起こしへ
治安面の懸念は大都市に限定
健康面では防蚊対策を
PNGの治安については、分離独立の動きがあるブーゲンビル島の一部が、外務省の危険情報でレベル2の「不要不急の渡航は止めてください」に指定されているが、それ以外はすべてレベル1の注意喚起にとどまっている。同省などによれば、PNGの犯罪の多くが集中する最大都市のポートモレスビーと第2の都市のレイでは、失業の増加などから若者が「ラスカル」と呼ばれる小規模の徒党を組み、金品の強奪などをおこなうことがあるとされるが、今回のツアーで訪れた地方都市では深刻な問題とはなっていない。
ただし多部族で構成する国家だけに、5年に1度開催される総選挙の際には部族間の軋轢などに起因するさまざまなトラブルが報告されており、事前の情報収集と安全への配慮が必要になる。次回の総選挙は17年夏の予定。なお、PNGの主な宗教はキリスト教と祖先崇拝などの伝統信仰で、深刻な宗教対立などはない。
健康面では、山岳地帯を除けばマラリアに感染する可能性を否定できないが、出発前に日本各地のトラベルクリニックで予防薬を処方してもらい、現地では虫除け剤の使用や長袖の着用などに努めれば、予防はおおむね可能と見られる。症例は少ないもののデング熱やジカ熱の発生事例もあることを考えれば、防蚊対策をしっかりおこなうことが安心と安全につながるだろう。なお、厚生労働省は感染症対策に向け、従来品より高い濃度の虫除け剤の承認審査を迅速化する方針で、国内販売が開始されれば旅行者の強い味方となる。
在PNG日本大使館によれば「保健・衛生関係の指標は太平洋諸国中でも低位に留まる」ため、滞在中の飲食については注意を払う必要があるが、主要な都市や観光地には、豪州からの旅行者も多く利用する高級ホテルやレストランが複数あるため、リスクは少ないと考えられる。水道水は飲用には適していないため、ボトル入りのミネラルウォーターを購入する必要がある。
そのほかの問題としては、PX日本地区総支配人の鈴木哲夫氏も「1番のネック」と語るようにインターネット環境の整備が進んでおらず、滞在したホテルやポートモレスビーのジャクソン国際空港などでも、うまく接続できないケースが散見された。しかし今後は時代の流れとともに、ある程度の環境整備が進むと考えられる。
参加者から挙がったPNGに対する意見のなかには、リーズナブルな価格帯の宿泊施設が少ないことや、バスなどの公共交通機関が未発達であることなどから、「バックパッカーには厳しい国」というものもあった。観光資源に恵まれ、日本からそう遠くはなく、直行便がある国のなかでは珍しい部類に入るが、それは裏を返せば旅行会社の企画力や手配力の見せ所でもあるだろう。
近年のPNGへの年間日本人旅行者数は、業務渡航を含めて約3000名程度。日本から比較的短時間で訪れることができ、他の国にはないプリミティブでユニークな観光資源を持つ国にしてはまだまだ少なく、伸びしろは大きい。現地の事情に明るいランドオペレーターなどと協力し、増便の追い風を得てツアーのバラエティを拡充すれば、需要開拓への道は大きく開けるはずだ。
取材:本誌 行松孝純