エクスペディア、訪日拡大で宿泊仕入強化、旅館や自治体と協力
エクスペディアは日本でのホテルや旅館の仕入れを強化している。同社グループで全ブランドの仕入業務をおこなっているエクスペディア・ロッジング・パートナー・サービス(LPS)で日本・ミクロネシア地区統括本部長を務めるマイケル・ダイクス氏は本誌とのインタビューで「エクスペディアはグローバルな観点から日本を最重要市場と位置づけている。社内のゴール、日本の観光政策のゴール、そしてマーケットの動向が合致しており、今後も継続的に投資を続けていく」と話し、日本政府が目標として掲げる「2020年までに訪日外国人旅行者4000万人」についても貢献していく姿勢を示した。
ダイクス氏はエクスペディアの強みとして、20年以上にわたって蓄積してきた膨大な予約および顧客動向データと、月間4億5000万人以上のウェブサイト訪問者数を挙げ、「グローバルな技術力と集客力を日本国内で生かして、特に地方の宿泊施設の仕入れに力を入れていきたい」と話した。同社では現在、東京と大阪に加えて名古屋、福岡、那覇、札幌にも営業所を展開。各営業所で仕入担当者を増やしており、その総数は2015年12月現在で約60名にまで増加している。「今後も同じペースで増やしていく」計画だ。
旅館については、「外国人旅行者の間で人気は高いが、まだハードルは高い。それを下げていく努力をしていく必要がある」とし、泊食分離のシステムについても、「さまざまなプランを掲載し、どれが外国人に好まれて、どれがコンバージョンが高くなるかを、旅館側とともにテストしていきたい」と明かした。また、エクスペディア独自で旅館の格付けを設定する計画があるほか、海外サイトで旅館の特設ページを設けるなどして、旅館の訴求力を高めていく方針だ。
このほか、地方自治体との協力も重視し、「地元レベルでの戦略が必要になってくる。各地方でのヒアリングを進めて、まず自治体がやりたいことを把握することが重要。その上で、地域DMOへのデータ提供などで協力していきたい」と意欲を示した。また、日本政府が進める東北復興についても、訪日外国人旅行者の誘致を進めることで貢献していきたいとした。
ダイクス氏はそのほか、旅行者の質についても言及。同社が提供するダイナミックパッケージでは、平均リードタイムが宿泊のみの予約と比べて平均27日早い69日前までに予約が完了し、平均連泊数も通常の予約よりも2倍以上長い4.3泊となり、さらにキャンセル率も1桁台にまで下がることから、「宿泊施設側にとって、質の高い旅行者の予約が可能」とアピールした。
15年の実績では、訪日市場で予約が多いのは香港や韓国。特に、香港はLCCネットワークの拡大によってリピーターが増えており、それにともなって同社の予約も増加しているという。中国については現地OTAとの提携で予約を取っているが、ほかのアジア市場と比べるとまだ少ないのが現状。同社の本拠地である米国での予約は安定的に伸びているという。今後は、エクスペディア・ドットコムやホテルズ・ドットコム単独でのビジネスを強化していきたい考えだ。
ダイクス氏は今後の取り組みについて「ゴールデンルート以外の宿泊施設の在庫を増やしていきたい」と強調。現在の日本の宿泊施設数は約3万6000軒で、そのうち国内大手OTAが取り扱っている数は約2万軒。積極的に販売されているのがそのうち1万軒ほどだという。同氏は「将来的にはエクスペディアでも1万軒にまでは増やしていきたい。そこが節目になるだろう」と目標を明らかにした。