農山漁村に訪日客を、グリーンツーリズムの現状と課題-EXPOより

  • 2015年10月13日

官民連携で受入体制を強化
旅行会社は「販売力」の発揮求められる

セミナーの様子  国内の農業や漁業の活性化に向けた施策として政府は、農山漁村に滞在し人々との交流や体験を楽しむ「グリーンツーリズム」の活用を進めている。観光業界にとっても、まさに着地型旅行の一形態であり取り組みが求められる分野の一つだ。9月25日のツーリズムEXPOジャパン2015では、日本旅行業協会(JATA)がセミナーを開催し、有識者がグリーンツーリズムの現状と課題、今後の可能性について、それぞれの目線から語った。

登壇者
農林水産省 農村振興局都市農村交流課課長補佐 志田麻由子氏
大田原ツーリズム 代表取締役社長 藤井大介氏
農家民宿 いろり 女将 伊藤信子氏


農水省、2020年の東京五輪に向け訪日客獲得ねらう
農家民宿の認知度向上へシンボルマーク普及も

農林水産省農村振興局都市農村交流課課長補佐の志田麻由子氏  セミナーではまず、農林水産省農村振興局都市農村交流課課長補佐の志田麻由子氏が登壇し、農水省の取り組みを紹介した。同省は、1992年にグリーンツーリズムを提唱。2008年には文部科学省や総務省と協働で、教育旅行に農家民泊や農業体験などのアクティビティを含めた「子ども農山漁村交流プロジェクト」を実施し、グリーンツーリズムの普及に努めてきた。

 現在は、農山漁村の生産額の増大に向け、今後成長が期待できる分野の1つに「都市と農山漁村の交流」を設定し、その中心事業としてグリーンツーリズムを位置づけ、取り組みを強化しているところ。今後は20年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据え、訪日客の農山漁村への訪問を増やしていきたいという。

 訪日客の滞在を促進するための取り組みとしては、15年から訪日客の受け入れに積極的な農家民宿に、シンボルマーク「Japan.Farm Stay」を制定した。ただし、全国に3196軒存在する農家民宿のうち、シンボルマークの取得軒数は20軒あまりに留まっているため、今後自治体が一括して申請できるような制度を設け、シンボルマークの利用を促していく。

 また、来年度の予算要求では、「日本の食文化の発信」「訪日旅行者の受け入れ体制」「輸出の促進」をセットにした地域への支援を考えているという。また、旅行業界との関わりについては、「全国の農山漁村がグリーンツーリズムを実践しようとしているが、売る力が足りない」ことが課題であるとし、セミナーに参加した旅行会社関係者に協力を求めた。