済州、KE直行便運休後も日本に注力-エアプサンが名乗り

観光客呼び戻しに向けファム共催
釜山経由で再提案めざす

観光振興に日本人が不可欠、自然などへの理解を期待

済州観光公社社長の崔甲烈氏 一方で済州島を訪れる旅行者の総数は、急激に増加している。2014年の国内外からの総観光客数は前年比13.1%の1227万3917人で、このうち外国人は42.6%増の332万8316人。ただし増加の要因となっているのは、現在の外国人観光客の8割以上を占める中国人だ。同公社によれば、韓国政府が06年に観光目的で同島を訪れる中国人のビザ取得を免除したことから、旅行者は爆発的に増加。現地の商店の看板には中国語が目立ち、観光産業における日本人の存在感は薄くなった。それにもかかわらず、済州観光公社は日本市場へのプロモーションを改めて強化するという。

 その理由について同公社社長の崔甲烈(チェ・ガプヨル)氏は「日本人の韓国旅行には50年もの歴史がある。中国人が急に増えたからといって、日本市場との関係を断つわけにはいかない」と語り、日本人観光客の重要性を強調した。急増する中国人旅行者の関心がビーチリゾートやショッピングなどに向きがちな一方で、韓国旅行に長く関わってきた日本人旅行者の興味の対象は自然や文化など多岐に渡っており、そのことが済州島の観光業の振興に大きく貢献してきたとの考えだ。

「ツーリズムEXPOジャパン2015」の済州観光公社のブース。一番左が渡守武氏  また、済州島への訪問者の多様性を保つことは、同島の観光業界にとって非常に大きな命題となっている。今回のツアーに同行した、同公社東京広報事務所所長の渡守武祐子氏は、ビザなしで済州島から入国した中国人旅行者の多くがソウルへと向かうことや、現在は済州島への訪問のみが対象となっている中国人のビザ取得免除が、今後はソウルへの訪問についても適用される可能性について懸念。「そうなった場合には、日本人に続いて中国人まで減ってしまうのでは」と語る。

 そのため、かつて済州島への外国人旅行者の大半を占めていた日本人に対する、同公社の期待は依然として大きい。渡守武氏は「現在は直行便のない名古屋や福岡にも広報事務所を置き続けていることが、その思いの表れ」と説明する。同公社は現在、島内に26本あるウォーキングルートの「オルレ」を、美しい景観を楽しめる観光の目玉の1つとして訴求し、ビーチや韓流ドラマのロケ地に留まらない同島の魅力を打ち出しているが、その理解や普及について、日本人旅行者が果たす役割は大きいと考える。

済州観光公社マーケティング事業部主任の呉基雄氏 呉氏もプレゼンテーションで、済州道がUNESCOの生物圏保存地域指定、世界自然遺産登録、世界ジオパーク認定を受けた「世界初のUNESCO自然科学分野3冠王」であることを強調。日本人旅行者向けのイベント「漢拏山紅葉トレッキング大会」や「済州オルレウォーキングフェスティバル」などで、魅力を知ってもらいたい旨を説明した。同公社では「済州島の自然や文化などの魅力の発信は、まだまだ進んでいない」との見方を示しており、今後は認知度を向上させて、新たな訪問者を獲得したい考えだ。