観光立国推進協議会が42の提言-観光地域づくりや地方活性、国民意識向上も

(左から)観光立国推進協議会委員長の山口範雄氏、観光庁長官の久保成人氏 日本観光振興協会(日観振)は1月20日、第2回観光立国推進協議会を開催し、「観光立国実現に向けた提言」を取りまとめた。同協議会は2014年1月、オールジャパン体制での観光立国実現をめざして創設したもので、観光関連企業・団体や自治体関連団体、財界、流通・小売、金融などの企業・団体のトップが参加。現在100企業・団体が参画している。

 日観振会長で観光立国推進協議会委員長を務める山口範雄氏は、政府が進める地方創生の中で「大きな柱の1つとして観光が位置付けられており、農林、水産、文化、産業など、関係省庁において観光をキーワードとした地方創生策が色々と検討されている」と説明。「観光立国を実現するために、本日提出をする提言が少しでもお役に立てれば」と期待を示した。

 来賓として登壇した観光庁長官の久保成人氏も「観光で国内外からの地方への交流人口拡大をはかることは、地方創生の観点からも極めて重要なテーマ」と強調。提言について「皆様方からの貴重なご意見として今後施策に反映していきたい」と語った。

 提言は、協議会が昨年8月に実施した観光庁によるアクション・プログラム2014に関するアンケートや、9月に実施した観光立国に関する国民の意識調査の結果を盛り込んで作成。12月に開催した第2回幹事会で案を提示して意見を求め、今年1月に最終的な取りまとめを実施し、本日観光庁長官の久保成人氏に手交した。

第2回観光立国推進協議会の様子  観光立国実現に向けた提言では、観光立国をめざす3つの柱を設定し、42の提言を発表。「魅力ある観光地域づくり」として26の提言を、「地域社会の活性化」として10の提言を、「国民意識の向上」として6の提言を取りまとめた。

 魅力ある観光地域づくりでは、誰もが訪問したくなる観光地域づくりを進めていくための具体策として「個性ある観光地域づくり」「観光産業の人材育成」「移動しやすい環境づくり」「ショッピングツーリズムの促進」「受入環境の整備」の5項目に分けて提言。個性ある観光地域づくりでは、東日本大震災による被災地の復興支援を掲げた。また、地域の個性や独自性を活かした観光地域づくり、広域周遊ルートの形成促進、産業観光の振興などを提案した。

 観光産業の人材育成では、若者や女性の人材育成の取り組み、通訳案内士の育成や制度改善、各地域でのボランティアガイドなどの充実、外国人の活用などを訴えた。移動しやすい環境づくりでは、誰もが安心・安全かつスムーズに移動できるような環境整備、観光案内所の整備・充実、自動車・自転車旅行への対応、空港の受入機能の強化、ビザ発給要件の戦略的緩和、訪日外客向けの情報の普及などを提言した。

 ショッピングツーリズムの促進ではクレジットカード、両替、免税の環境整備や、免税店増加のための制度周知などについて言及。MICE誘致対策では誘致への取組強化とユニークベニューの活用など、受入環境の整備では災害時の情報提供や一時避難の受入対応、訪日外客の多様化に伴う宗教的慣習や異文化対応などを提言した。

 地域社会の活性化では「訪日プロモーションの強化」「MICE開催の促進」「国内需要の創出」を提言。訪日プロモーションの強化では、日本政府観光局(JNTO)の機能強化や2020年の東京オリンピック・パラリンピックの有効活用、ニューツーリズムの認知度向上と支援などを挙げた。MICE開催の促進では、申請窓口の一元化や簡素化、MICE開催の際の寄付金の免税措置拡大などを要望。国内需要の創出では、全国の観光資源の発掘やブラッシュアップ、連続休暇取得の促進、若年層の宿泊体験の増加などを掲げた。

 国民意識の向上では、「観光立国実現に向けたアクション・プログラムの周知」徹底や、ボランティアが活躍する環境の整備、学校教育での「旅育」導入などの「観光に触れる機会の充実」、東京五輪の活用や国民全体での訪日外客数2000万人の目標の共有など「『観光立国』の実現に向けた国民運動の展開」を掲げた。なお、観光立国に関する国民の意識調査では、2232名の回答者のうち57.8%が日本が「観光立国」を国づくりの柱の1つとしていることを「知らなかった」と回答しており、提言では、観光立国の実現のためには観光振興の機運の醸成と国民的な運動につなげていく必要性を説いている。

 協議会では、今後は観光庁に対し、提言のアクション・プログラム2015への組み込みをはかるとともに、協議会参加各社・団体に対し、提言の実現を働きかけていく考え。また、協議会の幹事会で、提言の実行状況などを各社にヒアリングするなど、フィードバックをおこなっていく予定だ。