地方発海外の活性化は「互恵」重要、訪日受入の基盤にも

▽「組み合わせ」の重要性、アウトバウンドも広域で

青森県観光国際戦略局次長の高坂幹氏

 パネルディスカッションでも、青森県の高坂氏が活動を紹介。青森県では、「役所は部局が違うとうまく連携できない」課題を解決するため、外貨獲得に関係する事業を一元化。「観光国際戦略局」として訪日旅行、海外旅行に取り組むほか、貿易なども担当している。

 活動例としては、例えば国内旅行では、フジドリームエアラインズ(JH)の名古屋/青森線が就航当初は苦戦したものの、JHウェブサイト上で中京圏の観光情報を充実するとともに、青森県側でもテレビを通して需要を喚起し、逆に中京圏では青森の魅力を発信して利用率が向上。

 同様に国際線でも、戦略的に双方向の工夫を組み合わせることが重要で、さらに国内側の取り組みは広域で進める必要があると説く。高坂氏は、「アウトバウンド需要を単県で創出していくのは非常に厳しい」とコメント。隣同士の県で同じ国、ましてや同じ航空会社の路線を維持するよりも、分散することでエリア内の海外旅行需要を集約でき、訪日旅行でも広域観光を提案しやすいメリットがあると強調した。

 このほか、高坂氏からはターゲット国の明確化も重要になってくるとの意見も出た。青森県ではもともと韓国や中国、ロシアなどとの関係が強いが、その時々の政治関係などに翻弄されるため、海外旅行、訪日旅行問わず、親日度などにより選択的に注力していくことが必要との考えだ。

KNT-CTホールディング海外旅行部部長の河野淳氏

 ただし、韓国などでも、外部環境に左右されない需要を確保する努力も続けているところ。具体的には自治体やメディア、商工団体と連携して相互交流を活発化しているほか、登山やトレッキング、キャンプなどSIT分野での交流も促進。MICEや教育旅行の取り組み、潜在需要の掘り起こしもおこなっているという。

 旅行会社との連携しており、例えばツアー・ウェーブはソウルでの婚活ツアーを企画したほか、女子会ツアーとして、ホテルではなくスパに宿泊するようにして旅行代金を抑えて需要を喚起した例もあるという。

 なお、北海道や青森県の取り組みの特徴はアウトとインの一体的な取り組みだが、KNT-CTホールディングスの河野氏はこうした「互恵性」が成長の鍵になると分析。「青森空港を使う山形県民の方々にどのようなメリットを出すか。地域内の旅行をされない方、旅行で利益を得られない方に対するメリットをどうするか」といった点について、「互いに相手を思いやる」ことが重要ではないかと意見を述べている。