なぜ今、旅行にビッグデータが必要か、新時代のマーケティングとは
ツーリズムEXPOジャパン業界日セミナーより
節目迎えたアウトバウンド活性化へ、ビッグデータの活用を
ツーリズムEXPOジャパン2014の業界日、会場内ステージAのトリに用意されたのは、「ビッグデータ時代のツーリズムマーケティング」セミナーだ。講師として登壇したTQおよびBUZZPORT代表で、観光マーケティングに携わるトラベル・プロデューサーの江藤誠晃氏は、国家的目標のインバウンドと同数をアウトバウンドでも送り出すことを呼びかけるとともに、2000万人の目標を前に足踏みする日本の海外旅行市場に訪れている構造変化を指摘。その活性化策となるマーケティングのヒントと、旅行業界に迫られているビッグデータの活用を訴えた。
「スマホ」「SNS」「GIS」が“3種の神器”に
江藤氏によると、旅行業界のビジネスに訪れている構造変化の要因のひとつは、ITの進展とSNSの浸透だ。人々はオンラインで簡単にフライトやホテルなど旅行の手配や旅行の情報収集をするようになった。SNSを介し、自分がした旅行について知らない人とも「いいね!」とコミュニケーションをとれるようにもなったことにも、「ここから始まるネットワークの未来がある」と新たな可能性を示唆する。
旅行マーケット自体についても、日本の人口が縮小するなかで「若者が世界に行かなければ減ってしまう。今までの商品やメディア戦略では市場がシュリンクするのは明らかで、旅行業界を改革していかなくてはならない」と強調。そのポイントとして「SNS」「スマートフォン」「GIS(地理情報システム)」が「これからのマーケティングの3種の神器になる」とし、「ここからビッグデータが得られる。これを使って何ができるか」と注目を促した。
ここで江藤氏は、大手ファーストフードチェーンでクーポン戦略にスマートフォンを取り入れ、ビッグデータを収集・活用している例を紹介。毎朝一定の時間にコーヒーを買う人はビジネスマンが多いとの想定のもと、彼らには休日のファミリー向けクーポンを送付。GISで特定店舗の付近にいると判明した人に、該当の店のクーポンを配っているという。
では、旅行においてビッグデータはどのように活用できるのか。江藤氏は「今後、旅行者の志向は複雑化する。同じ国に行く人でも、初めての人とリピーター、ハードリピーターで異なり、提案する商品は自ずと絞り込みが必要になる」と説明。その際、一人一人の行動属性を掴むことができるビッグデータがポイントになると語った。
ビッグデータとは、インターネットやコンピューターの処理などで生成される大容量のデジタルデータのこと。パソコンやスマートフォンなどでのポータルサイト、SNSなどの利用では、入力する文字や投稿時の画像、動画など様々のデジタルデータがインターネットのサーバー上に蓄積されている。江藤氏は、「人間では調査できないものをスマホやSNS、GISが実現してくれる。人智を凌駕するデータ」と、ビッグデータの利点を説明した。
▽参考
総務省情報通信白書平成26年度版(PDF)