インタビュー:ジャッツ東京ツアーコンダクターセンター添乗員の原好正氏

  • 2014年8月28日

参加者に話を聞いてもらう工夫が重要
現地情報を活かしたゆとりのあるツアー造成を

-長年添乗されてきた経験を踏まえ、現在のパッケージ商品についてどう思われますか

  始めに値段ありきというツアーがあまりにも多すぎるのが現状だと思います。旅行業界は特許がない業界なので、例えばA社が良いコースを作ると、A社で沢山売れているからB社でもやろうという動きが起こります。どこも同じようなツアーが同じように売れるようになり、価格で競争する時代になっています。

 また、業界では内容を詰め込んだ余裕の無いツアーが増えたと思います。例えばロマンチック街道とスイス、パリを組み合わせたツアーでは、ハイデルブルグに1時間半滞在し、30分自由行動をした後、3時間移動してローテンブルクにつき、昼食後1時間半で次の場所へ。これではお客様が何を見たのかがわからないですが、それが今は売れています。ただ、参加者からはもう2度とこういうコースには行かないという声も聞こえてきますし、添乗員としても行きたくないコースです。

 一方、ゆとりのある旅を作る動きも出てきており、そうした流れはとてもいいと思います。今後は、インターネットで情報を取捨選択して自分で手配をするケースと、ゆとりのある満足度の高い旅を求めるケースと、2極化が進むのではないでしょうか。

 一番重要なのは、内容重視型のパッケージツアーをいかに造成、販売するかということ。そのためには、現地事情を知る社員の人材育成が必要です。現地を知らなくても企画はできますが、中身の濃い旅行をどう企画するかが今後の課題でしょう。

 また、食事についても課題があると思います。アンケートを見ると、食事に対するご指摘が多いです。食事のつかないツアーでは添乗員が現地でフォローをしますといっても、造成の方から見ると、食事を抜くと不安だから申し込まない人がいる。何回食事付きにするのかは頭を悩ませる所のようです。

 販売の面からでは、カウンターのプロも求められていくでしょう。カウンターは将来なくなるのではという話も聞きますが、私はそうは思いません。インターネットが発達し、情報が氾濫している状況の中、適切な情報を取捨選択し、うまくアドバイスできるカウンターのプロは必要な存在だと思います。


-今後の抱負について教えてください

 私の座右の銘は「人間何かの道を持たないといけない」です。ぶれないで一生追い求めるべきものがある。それが歳を重ねてわかってきたことで、私の場合は「食」です。食に対する興味は尽きないので、一生追い続けていきたいと思っており、添乗員としても生涯現役を続けられるだけ続けたいです。

 若い時の知識と数十年の知識は違うので、お客様と同じレベルで感動できるかは添乗員を続ける上での重要な要素ではないでしょうか。例えば、マロニエの新芽が芽吹いた新緑のパリを見て綺麗だなあと感じる。何百回も見ていますが、お客様と同じレベルで感激できる気持ちを失わない限り、続けていきたいと思います。


-ありがとうございました