現地レポート、イタリアに新高速列車登場-欧州を鉄道で巡る魅力
イタリア高速列車「.italo」の登場で
さらに快適になる鉄道の旅と各地の新素材
国境を越えた路線網が張り巡らされたヨーロッパでは、高速鉄道は旅の重要な要素のひとつだ。都市間の移動の利便さはもちろん、途中下車も簡易で、空路とはまた異なるアクセントを付けた旅程ができる。11月下旬から10日間、レイルヨーロッパが主催したスペイン、フランス、イタリアを高速列車で移動するFAMツアーに参加。ミラノ/ローマ間は今年4月に運行を開始したNTVの「.italo」に乗車し、快適な乗り心地を体験した。その間に訪れた各都市の新素材とあわせてレポートする。
ヨーロッパ初の民間高速鉄道「.italo」
特長はホスピタリティ
2010年EU圏内の国際旅客鉄道輸送が自由化され、民間企業の参入が可能になった。これを最初に実現したのが、フェラーリ兼ファイアットの会長、トッズやセリエAの会長ら4人の企業家が共同出資したNTVの高速列車「.italo」だ。2012年4月に運行を開始し、現在はトリノ/ミラノ/ボローニャ/フィレンツェ/ローマ/ナポリ/サレルノ、ボローニャ/パドヴァ/ベネツィアを運行している。
「イタリアの」を意味するitaloは11両編成。カテゴリーは、上位から「Club」「Prima」「Smart」の3つで、Clubには4人用の個室「Clubsweet」が2室、1両が映画専用の「Smart Cinema」という構成だ。レストランカーはないが3種類のミールボックスが提供され、頼むとレンジで温めてくれる。それだけでも画期的なサービスだが、一番の特長はなんといっても“ホスピタリティ”だ。
私たちはClubに乗車したが、乗車まもなくワゴンサービスが始まった。スタッフたちは誰もが笑顔を絶やさず明るく感じが良い。そんな彼らと触れあっていると、「はるばる遠くまで来た甲斐があった」という気持ちになり、車内の空気が温まってくるのを感じる。
各駅にはインフォメーションセンター「casa italo」があり、プラットフォームにもスタッフが常駐している。実はミラノ・ガルバルディ駅には階段しかなく、重いスーツケースを運ぶのに苦労したが、そんな際も声をかければ運んでくれるという。まさに人海戦術の至れり尽くせりのサービスで、旅行者はどこにいても「見守られている」という安心感に包まれる。
イタリア鉄道の路線を走るので、イタリア鉄道にとっては大きなライバルとなる。目的地までの所要時間、価格ともに大差はないが、サービスの差はとても大きい。FAMツアーに同行した鉄道ジャーナリストの櫻井寛氏は、「実際に乗ってみて、理想に近いすごい列車ができたなというのが実感。笑みがこぼれる列車です」とまさに笑顔で感想を述べた。参加した旅行会社スタッフも「鉄道ファンはもちろん、移動をできる限り快適にしたいと望むお客様にぜひ薦めたい」と話す。
チケットに関してはNTV以外の販売ルートはレイルヨーロッパが世界で唯一となる。ローマ発ナポリ行きはローマ・オスティエンセ駅ではなくローマ・ティボルターナ駅から発車するなど、発着駅については確認すること。停車駅は往路で違う場合や季節によって異なる場合があるので、常にタイムテーブルをチェックする必要がある。