「外国船と日本船はマーケットが異なる」、JOPA入谷会長

  • 2012年9月22日

JOPA会長の入谷泰生氏 日本外航客船協会(JOPA)の会長を務める日本クルーズ客船代表取締役社長の入谷泰生氏は9月21日、都内で会見を開いた。日本での集客を目的とした海外船社による日本クルーズが相次いでいるが、「影響がまったくないとはいわないが、そもそも日本船の乗客と外国船の乗客は違うマーケットにいるため、大きな問題にはならないだろう」と語った。

 また個人的な考えと断った上で、「1989年にJOPAが設立してから、日本のクルーズ人口は大きく増加していない。しかし現状でも経営的に成り立っている以上、ボリューム(数)を求めることが絶対的に正しいことなのかという疑問もある」と述べ、急激な成長よりも安定成長を求める考えを示した。

 入谷会長はまず、東日本大震災後から今日に至る業績について触れ、「回復傾向にある。すでに震災前の水準をクリアしている」と好調であるとの認識を示した。来年度の事業内容については、「旅行業界向けにはクルーズ・アドバイザー認定制度を一層拡充して行きたい。今年のクルーズセミナーには過去最高の910人が申し込みをおこない、クルーズ・アドバイザーの累計は3481人に達している。また一般消費者向けのピーアール活動にも力を入れていきたい」と語った。

 加えて、一層のマーケット拡充をはかるため、関係省庁へ規制緩和を求めていきたいともしている。例えば外国人船員が勤務していることで30日に一度外国の港へ寄港しなければならない通称「30日ルール」の撤廃など、日本船が課せられている数々の規制を緩和させないと、外国船には勝てないという趣旨だ。

 また、JOPAでは日本市場をねらった外国船による日本寄港クルーズが増加している昨今、JOPAは来年4月から始まるサン・プリンセスの日本寄港クルーズについて「カボタージュに当たる」との見解を示し、5月に国土交通省に対して厳格な対応を求める要望書を提出したところ。

 これについて入谷会長は、「判断や対策は役所がお考えになられること」と述べ、協会として具体的な対策や返答期限を求めない考えを明らかにした。こうした日本市場を対象に安価な料金でクルーズを実施する外国船に対して、「日本船と問題になっている外国船とではセグメントが異なる。日本人乗客に対しては、外国船よりも日本船の提供するサービスの方が質は上。マーケットが異なるために大きな問題にはならない」との考えを明らかにした。

 ただし、合わせて「若年層などを中心に外国船に流れる客層もいると思う。それによって業績が下がれば、優秀なサービスを維持できなくなる可能性はある」とも語り、こうした考えがカボタージュ判断の要望書などに結びついたといえる。

 このほか、今後は団塊の世代がますますクルーズに興味を持ってくると期待し、「こういう層への取り込みをはかっていきたい」と語った。